本当の戦いはここからだぜ! 〜第二幕〜

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【感想】『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』

 

 

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令和を迎えて初めてのライダー冬映画は、もうド直球に面白かった!!

 

 

 

 

 

 

以下、作中の展開に触れたネタバレ有りの感想です。ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

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今回の令ジェネは、作中でも言及される『夢に向かって跳ぶ』をテーマに、ゼロワン=飛電或人の成長譚として非常に手堅く作り込まれた王道かつ真摯なドラマであった。改めて振り返ってみても、あくまで褒め言葉として、ジオウの影が薄かったなあ、と。ジオウからの要素としては、劇中で使われたギミックの数々がゼロワンの物語には影響するものの、そこで線を引くかのように完全なるサブとして客演に徹するというバランス。そして物語はヒューマギアが暴走したデイブレイクの真相、そして或人の父である其雄の秘密に迫っていく構成。堅実にエピソード0を描くというアプローチ、高橋悠也の書く脚本が成せる技である。

 

 

あの『仮面ライダージオウ』という作品が放送を終了してから、ようやく半年が経とうとしている事実にちょっと驚いている。『ジオウ』は、クウガから始まった平成仮面ライダー20週年アニバーサリー作品であり、面倒な特撮オタクの端くれとしては色々思う事があったのだけど、何だかんだ最後まで楽しませてもらった作品。しかしその一方で、調合を少しでも間違えてしまえばその全てを“ジオウ色”に染め上げてしまう劇薬のような作品だと感じている。ソウゴという最高最善の魔王を目指す突飛すぎるキャラクター、ライドウォッチという変則的なアイテム、タイムジャッカーによる歴史改変、など挙げればキリがないけれど、その一つ一つが余りにも濃すぎるというかまあ無茶苦茶なのである。

 

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そんなジオウの世界ではお馴染みだった、特にアナザーライダーによる世界改変というギミックを物語の中心で据え置くことで、ゼロワンの世界の改めてオリジナルが持つテーマを浮き彫りにしていくのも面白い。アナザーゼロワンの出現により、ヒューマギアが世界を支配し人類は滅亡に追い込まれていた。『人間とヒューマギアが共に笑いあって暮らせる世界を作る』という或人の抱く夢とは真逆の世界が生まれてしまった事で、或人の気持ちが揺らいでしまう。避難区域に追い込まれ首の皮一枚で生存する人類と、発展した都会で人間のように暮らすヒューマギア、この逆転構造は劇場版仮面ライダー555の『パラダイス・ロスト』を彷彿とさせる。人間を見つけ次第、自分の持ち場を捨ててまでも襲ってくるヒューマギアの姿は少しホラーでしたね。

 

 

そこに立ちはだかる或人の父“其雄”=仮面ライダーⅠ型。或人が超えるべき存在としての其雄という対立構造には、いくつもの意味が重ねられているように思える。1号と似つかわしいⅠ型を前時代の象徴とするなら、同じバッタモチーフでもゼロワンは新時代の風雲児。そして或人の夢を叶えるためにはその夢を阻む父親を止めなくてはならない、という精神的な障壁。この構造そのものがゼロワンという作品の決意表明を、そのまま示しているかのようである。

 

 

ゼロワン第1話で、ボロボロになりながらも或人が「人の夢を笑うな!」と啖呵をきったシーンが印象的だったように、『夢を持つこと』がゼロワンという作品では重要な意味を持つのだなと実感した。衛星ゼアは未知なる宇宙への期待、ヒューマギアというテクノロジーは技術の更なる進歩、そんな彼らと共に歩んでいく未来、ゼロワンは人類の新時代に明るい希望をもって進んでいこう!というポジティブなメッセージが込められているようにも思えるのである。ジオウをもって平成ライダー20周年に区切りがついた2019年、ゼロワンは元号にも縛られず過去をも越えて、未来へ向かって跳躍していくんだ!新時代を俺が切り開いていくんだ!という強い意志表明。これこそ『夢に向かって跳ぶ』である。

 

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だが決して、過去に意味がないわけではない。「平成」という単語が常について回ったジオウが、この一年積み重ねてきた精神性を主張し、仮面ライダーとは何か?を再定義する。「仮面ライダーの力は、悪に由来する。」というアナザー1号は、自分こそが原点にして頂点であると主張する。そこにソウゴが「仮面ライダーに原点も頂点もない!」、歪で凹凸でだから個性で勝負する。ジオウにしか成しえない、ジオウだからできる痛烈な切り返しだろう。

 

 

本作のメガホンを取ったのはゼロワンの第一話のパイロットを務めた杉原輝昭監督。杉原監督といえば『ルパパト』でも発揮された斬新なカメラワークが本当に見事で、360度方向から撮影された戦闘シーンや、ハッタリの効いたケレン味溢れる演出、一枚絵でカッコいいキメ姿をドーンと見せてくれたり、常に映像を通して驚きを与えてくれる。しかしやっていることは、カッコいいをとことん突き詰める、という実にシンプルなのである。そして今作でもそんな杉原監督の手腕が120%活かされた、バトルシーンの数々が最高だったのである。

 

 

まずはゼロワンvsⅠ型のバトルシーン。Ⅰ型の赤いスラスターの残像がマフラーに見える実に憎い演出であったり、高速移動する両者が縦横無尽にぶつかり合い拳を交えるアニメ的な演出、これらのバトルシーンは前述した“父を乗り越える”という展開的なアツさも相まって本当に素晴らしかった。

 

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そしてゼロワン&ジオウvsアナザー1号。これは一昨年の『平ジェネforever』から着想を得たのだろうか、360度のカメラワークとCGをふんだんに駆使したてんこ盛りなアクションシーンであった。ジオウがアビリティを次々に変え応戦しているとカメラが切り替わり、グランドジオウが平成ライダーを召喚し怒涛の追撃を行う。そして最後に両者のダブルライダーキック、これがまた決めの一枚絵としてドーンと抜群に決まるのである。最高of最高。

 

 

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昨年の夏に公開された『Over Quartzer』という怪作に比べると突飛な展開やサプライズは無いだろうし、昨年冬の『平ジェネforever』よりも華やかさには欠けるかもしれない。しかし、『ゼロワン』という作品のこれからを期待させてくれる、堅実に真摯な作品としてこの『令ジェネ』はほんとに素晴らしかった。自分的にはぜひ“推したい”一作でした。

 

 

 

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