本当の戦いはここからだぜ! 〜第二幕〜

好きなものをどんどん語ります

それでも私は「東映」を応援したい。

 

 

昨年の11月頃、一つの記事がnoteに投稿された。

 

note.com

 

東映の撮影現場における過重労働及びセクハラの告発記事だ。

 

その内容は投稿主の女性プロデューサー補佐が受けたセクハラと、現在も放送されている「仮面ライダー」の現場が、どれほど過酷なスケジュールで制作されているかが、赤裸々に綴られている。

 


限られた納期の中で制作をするために、早朝から深夜に渡っての撮影が連日行われていること。36協定を無視した固定残業制への突然の切り替え。さらにフリーのスタッフから受けた度重なるセクハラ行為。与えられた精神的な苦痛は数え切れず、こうした労働環境の改善を訴えても聞く耳を持たない上層部。

 

あまりにもフィクションが過ぎるというか、読み進めていけばいくほど、怒りを通り越して「呆れ」の気持ちすら沸いてくる。特にセクハラに関しては記事内でも記述されている通り、シアターGロッソでの件や、「ガオフェス」での件など、インターネットを騒がせた騒動の一つとして記憶に新しい。

 

www.huffingtonpost.jp

 


仮面ライダー」および「スーパー戦隊」は、放送の起点が半年分ずれている。2009年の『仮面ライダーW』から始まったこの体制は、前者を9月に、後者を3月からのスタートとして今なお続いている。この13年間で、「春映画」「MOVIE大戦」「平ジェネ」など公開枠は形を変えてきたが、おおよそのスケジュールに変更はなされていない。

 

テレビで展開される一年間の放映、例年の夏に公開されている二本立て映画、冬に公開される仮面ライダーの単独映画、春先に公開されるスーパー戦隊単独映画、このサイクルが一年間続いていく。さらに近年では本編終了後にVシネマが公開され、配信限定ドラマも放映されていたりと、映像コンテンツだけを取ってみても、怒涛の勢いでリリースされていることが分かる。

 

 

一年間のドラマを制作するだけでもその苦労は計り知れないわけで、さらに映画は二本〜三本制作し、終了後もコンテンツとして形を変えて売り出していく。あくまで対比の例として用いるけど、今の円谷プロにはそれは絶対真似できないので、東映資本力の強さをあらためて実感する。

 

vcinext-saber.jp

www.toei-video.co.jp


 

 


しかし、冷静に考えれば考えるほど、この規模のマーケティングを実行していくのに対し、現場のスタッフが足りているのか、過密スケジュールの合間にどうやって映画やスピンオフを撮っているのか、一介の特撮ファンとして疑問を持たなかったわけではない。だからこそ、この告発記事がある種の「答え合わせ」となり、言葉に言い表せない心のわだかまりを感じてしまった。

 


このnoteでの記事を機に、現行の「仮面ライダー」「スーパー戦隊」の放送を追うことを辞めてしまった。後者については、撮影スタッフも環境も「仮面ライダー」とほぼ同等だということを考慮している。

 

今後シリーズが続いていく中で自分も視聴していれば、とにかく面白い作品や全く自分の肌に合わない作品、様々な出会いが待っていると思う。しかし、どうしても、「過重労働とセクハラが横行した撮影現場で制作されている」という枕詞が、自分の脳裏によぎってしまうのである。

 

 

 

 

 

 

 

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ただ、もう一つのことも考えている自分もいる。

 

こうした告発記事を発信するという行為は、正しかったのだろうか?ということ。

もちろん過重労働・パワハラ・セクハラは絶対に許せない、という大前提のもとである。

 


このような労働に関する協議というのは、特に双方の言い分が複雑に絡み合っているものであり、多角的な視点と客観的な評価が必要不可欠となる、非常に繊細な事柄だと思う。決して被害者の方を疑っているわけではないのだけど、アップされた告発記事は、あくまで片方の意見しか掲載されていない。つまり議論を行うのであれば、ここにもう一方の意見も開示されなければ、公平性が損なわれてしまうのである。

 


とはいえ、アップされた記事がそもそも「議論を行う」ことを目的としていないのは明白で、おそらく世間にこの現状を知らせるための「暴露」という意味合いが強いのではないか、と。注目を集めてこの問題に世論を注目させ、事を大きくすることで東映側にこれを無視させない。外堀を埋めていくためである。事実として、あの告発記事には相当な数のブクマが付いており、多数のコメントが寄せられている。

 


しかし、結局これは、「煽り」の範疇を越えないし、一方の意見しか知る由もない第三者を巻き込んで、客観的な評価を下すことを封じているとも言えるのではないか、と。単純な二元論に落とし込んで、「被害者側からの意見が絶対に正しい」「東映はやっぱりダメだ」という空気が醸成されることは、やはり正しくはない…と思う。

 

 

 


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こうした問題に直面した時、「作り手」と「作品」は切り離して考えられるべきだと思う。良い人格を持つクリエイターの作品が、必ずしも「良い作品」を作るとは限らない。その逆もまた然りで、「作り手」と「作品」の評価軸を交わらせたところで、何も生まれないし何の意味も持たない。

 


自分はこれから「東映」にどう向き合えば良いのか。ずっと考えていた。

 

そこで出した一つの答えは、「応援し続ける」ということ。

 

この問題に対して、当事者でない限り自分には何もすることができない。記事で述べられている様々な問題を「事実」として確定する事もできない。不用意に主張しても取り返しのつかないことになりかねないな、と。

 


これはしがない一人の特撮オタクの、ささやかな抵抗だと思って欲しい。20代も後半に差し掛かる年齢になるが、今もこうして元気に生き続けられていること、自分という人間を形作ってくれたその一つに、「東映」はある。「仮面ライダー」「スーパー戦隊」に出会わせてくれたおかげで、自分の人生は間違いなく彩られてきた。

 


だからこそ、これからも応援し続ける。メインターゲットとする子供たちに大切なことを伝える作品の裏では、パワハラとセクハラが横行しているかもしれない。胸を張って夢を語れる立場ではなくなるかもしれない。それでも、自分があの時確かに受け取ったものが、今もかけがえのないものとなっているように、より良い方向へ変わってくれると信じたいのである。

 

 

www.cinematoday.jp

 


東京国際映画祭においての白倉プロデューサーの発言や、『仮面ライダーBLACK SUN』のメガホンを取る白石和彌監督は、パワハラ撲滅のためのリスペクト・トレーニングを取り入れていることで注目を浴びている。これらはそのより良い方向へ向かうための一つであると思いたい。

 

そして、視聴を止めていた現行のニチアサも、来週の3月6日㈰に放送がスタートする「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」を機に再開してみようと思う。

 


そして、最後になりますが、被害に遭われた被害者の方々が受けた精神的・肉体的な苦痛は計り知れないと思います。どうか一日も早く心が安らぐこと、そして納得のいく協議がなされることを心から願っております。