感想『仮面ライダークウガ』EPISODE 5「距離」

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(↑第4話の感想はこちら)


今回の第5話そして第6話では、『クウガ』におけるヒロイン枠を担っている沢渡桜子(演:村田和美にスポットが当たるエピソードとなっている。雄介とは大学時代からの友人である桜子は、彼がクウガとして戦うことを頑なに拒否してきた。そんな桜子はなぜ雄介のサポートを務めることになったのか。そしてクウガにも新たな姿が登場する第5話、早速いってみましょう。

 

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ついに警察が未確認生命体の存在を公に発表し、報道各所もその話題で持ちきり。細かな点として、諸外国の反応がその日の朝刊に載せられているところ。もしこれが2025年の現代ならSNSを通じて情報が拡散されて、警察の発表が遅すぎると言われ大炎上してしまいそう。その知らせを受けて、桜子はひとり怒りを爆発させていた。なぜなら友人として雄介(演:オダギリジョーがこれ以上戦うことを止めて欲しいと、一条(演:葛山慎吾)に頼んでいたはずなのにクウガがまだ戦っていたからだ(第4話)。

 

 "普通の青年が異形の存在へ変身する"ことに、真摯に向き合う過程で桜子のような一般人が抱く不信感を真正面から描くのは、物語において描くべき大切なノルマの一つだろう。ひとりの友人として桜子が怒りを露わにするのは当然で、調査団は第0号に命を奪われ長野県で第1号=ズ・グムン・バの恐ろしさを目の当たりにしている彼女にとって、また大切な友人が失われてしまう恐怖が常にあった。それに雄介がクウガへ初めて変身する瞬間にも居合わせていたので、彼が人間でなくなるかもしれない恐怖も抱いていたに違いない。

 

クウガじゃないでしょ?五代君でしょ?どうして簡単にそういう気持ちになれるのよ!」

 

 

ここで新たな登場人物たちにも注目したい。

 

ジャン・ミッシェル・ソレル(演:セルジュ・ヴァシロフ) ルーマニア出身で桜子と同じ研究室に所属している。彼は古代遺跡の研究に関わっていき科捜研と共に謎を解明していく。日本語も上手で梅干しが大好物らしい。

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そして、シリアスな展開に笑いを吹き込んでいくのが雄介の居候している喫茶店「ポレポレ」のマスターおやっさん(演:きたろう)。本名は飾玉三郎(かざりたまさぶろう)。暇さえあれば冒険家だった時の話を披露し、時折オヤジギャグを飛ばしてくる空気感が『クウガ』という作品の中ではかなり異質なんだけど、おやっさんの存在感は不思議と安心してしまう。「オリエンタルな味と香りの店、ポレポレです。」という宣伝文句は印象的で、昔発売されたDXの玩具にも雄介がこの宣伝を言っている音声が収録されたこともあった。

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雄介のベルトの秘密を紐解いていく上で、重要なキーパーソンとなるのが関東医大病院に勤める法医学士、椿秀一(演:大塚よしたか)。一条とは高校時代からの友人でもあり、雄介にも体の異常を調べるために診察を促していた(第2話)。椿の登場により医学的な観点も織り込まれるため、リアリティラインの説得力をより強固にするのが非常に『クウガ』らしい。


雄介の体をCTスキャンしたことで、ベルトの構造が判明する。ベルトから全身へ無数の神経組織が伸びており、それが驚異的な身体能力を生み出していること。もしこの神経組織が脳にまで到達すれば、人間ではなくなり。つまり、戦うためだけの生物兵器になることを意味する。ここでサラッと右足が熱くなった=マイティキックの発動要因を説明しているのが上手い。


今は理性を保ったまま戦えているかもしれないが、クウガへ変身し続けるというのはグロンギに近づいていく可能性があることを意味する。こんな衝撃的な事実を伝えられても、相変わらず雄介は笑顔とサムズアップで応えるわけなんだけど、クウガグロンギ紙一重の存在であることは、物語における重要な縦軸である。今思えばこんな序盤から示唆されていたことに驚いている。

 

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#クウガ20周年配信 「だって俺、クウガだもん」は「だってウチ、パン屋だもん」という『帰ってきたウルトラマン』ムルチ回のセリフがネタ元です😊#クウガ#kuuga#nitiasa#クウガ20周年

— 高寺成紀☺3月26日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM (@taka_69s) 2020年9月26日

 

今回、クウガが対峙するのは未確認生命体第6号=ズ・バヅー・バ。見た目通りバッタをモチーフにした怪人で、首にはマフラーを結び、発達した脚力から高所へのジャンプと強力なキック技を繰り出すなど「仮面ライダー」を意識していることは明らか。人間体を演じる小川信行さんは後年「ウルトラマンマックス」で、コバ隊員を演じておられたため、ご存じの方も多いはず。

 

 

その脚力を活かして、人間を高層ビルなどの高い場所に連れていき、そこから突き落とすというやり方で人間を一人一人殺していく。ホームレスの男性が襲われるシーンは直接的に「死」が描かれていて、引きの画で画面外から男性が落ちてくる生々しさ、地面にゆっくり血が流れてくる。分かりやすく死体を提示するよりも、あえて描かないことで視聴者に想像させてくるのが怖い。

 

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バヅーによる殺害から一転、雄介が現場に駆けつけるシーンに切り替わるのだが、ここのシーンが個人的に昔から大好きで。前シーンの続きで重く苦しい劇伴が流れて、不穏な空気を感じさせるのだが、トライチェイサーがトンネルへ入り変身音と共に雄介がクウガへと変身し、その瞬間に劇伴が「戦士」へと切り替わる。ここでトンネルをちょうど抜けるのも演出として上手い。漂っていた陰鬱な空気が一気に消し飛んでクウガ=雄介が駆けつける期待に満ち溢れたシーンへと変わっていく。ヒーローの登場として直球な演出としてとても印象に残っている。

 


現場では警官2人がバヅーに立ち向かうものの、まるで歯が立たない。バヅーに捕まった一人の警官がビルの上から落とされたところを間一髪でクウガが救出。ここでバヅーがグロンギ語をクウガに向かって話すのだが、やっぱり視聴者にはさっぱり分からない。しかし、よく聞いてみると「ズ・バヅー・バ」とクウガに向けて名乗っている。怪人が名乗るという昭和特撮的な"お約束"を、あえてグロンギ語でやってしまうことで演出として昇華させてしまう。

 

 

挑発されるがままバヅーについていくと、そこはクウガを取り囲むかのように階段が螺旋状に続いていく踊り場。高所を利用した錯乱と不意打ちのキックを食らい怯んでしまうクウガ。反撃を試みてもジャンプで高所に逃げられてしまう。バヅーに追いつこうとクウガもジャンプをするが、高さが足らず返り討ちにあってしまう。クウガが必死になって階段を駆け上がっていくが、この仮面ライダーらしからぬカッコ悪さが劣勢の状況をより強めている。とにかく赤のクウガではまるで刃が立たないことを丁寧に細かく描かれていく。

 

今のクウガでは絶対にバヅーに勝てない。雄介の悔しさへ応えるかのようにクウガの踝が青く光り、地面を蹴り上げた瞬間、クウガの体が見る見るうちに青く変化する。バヅーのもとに辿り着いたクウガは赤い戦士ではない、これが青い戦士ドラゴンフォームだ。

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本来であれば新フォームのお披露目は、ケレン味溢れる派手な演出や圧倒的な強さでその初登場回を終えるだろう。しかしクウガはまさかの敗北。ドラゴンフォーム特有の素早い身のこなしと高いジャンプ力でバヅーに立ち向かうが、その反動で青いクウガは打撃力が著しく低下してしまう。「パンチ力が弱くなってる!?」という雄介のセリフは作品でも指折りの名セリフだろう。ある能力が発達すれば、差し引くかのように別の能力が弱くなる。まるでジャンケンのような一長一短の特性をもった結果、クウガは再びバヅーによってビルから地面に叩きつけられてしまう。

 

この圧倒的に不利な状況を、クウガはどう打開するのか。
桜子さんは戦い続ける雄介に、何を思うのか。
そしてドラゴンフォームの手にする、あの武器はいったい……。

 


続きは次回の更新で。

 

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(↑第6話の感想はこちら)