本当の戦いはここからだぜ! 〜第二幕〜

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感想『仮面ライダークウガ』EPISODE 8「射手」放て、疾風の弾丸

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kazurex1215.hatenablog.jp

(↑第7話の感想はこちら)

 

 

 

クウガ第4の姿となるのが、緑の戦士ペガサスフォーム。その特徴は瞬間的に人間の数千倍にも発達する五感であり、通常は可視化できない紫外線や赤外線を捉えることはもちろん、人間の耳では聞き取れない超音波を感知することも可能になる。それゆえに、力の消耗が激しいため、その姿を50秒しか維持することが出来ない。制限時間を超えた場合、グローイングフォームへ戻り変身が強制解除。その後、2時間は変身不能に陥ってしまう。

 

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基本形態の中でも五感の発達というハイスペックな能力をもつペガサスフォームだが、それゆえに使いこなすことが難しい。50秒というウルトラマンさながらの時間制限、常に押し寄せてくる膨大な情報、こうしたロジカルな縛りの中でどう活躍していくのかが見どころだったりする。各フォームに必ず一長一短な部分を設けているのが『クウガ』らしさに溢れているな、と。

 

 

 

 


グロンギ達は特定の棲み家を持たず、各地を転々としている。例えばショッカーだと本部があるわけだけど、現代で敵の本部を設けようとしたら、警察に足がつくのも時間の問題だということも考慮されたのだろうか。だからこれも昭和ライダーのアップデートだと言えるのかな、と。それに場所が変わることでグロンギの不気味さにも一役を買っているのが上手い。今回は閉館後の博物館で、薄暗い室内にライトで照らされた恐竜の化石が、照らされ方で大きさが変化するのも絶妙。不気味な雰囲気を醸し出している。

 

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また、彼らの行う「ゲゲル」には、腕輪が必要不可欠であることがここのシーンで示される。この腕輪は全員が手に出来るものではなく、ゲゲルを行っている者にのみ渡され、殺した人間の数を計測をするためのもの。しかしバチスはクウガとの戦闘でその腕輪を紛失してしまったので、実はここでバラのタトゥーの女から、人数カウントを0に戻すことが伝えられているグロンギ対訳版で見直した時に初めて知りました…)。ここで、クウガを殺せば紛失した人数分を帳消しにするという駆け引きが行われていて、だから次の狙いをクウガに設定していたんだな、と。

 

 

 


夏目実加竹島由夏)は研究室を飛び出した後に、110番へ電話をかけては第0号への捜査を進めるよう懇願し、ある場所へ向かっていた。懇願と言っても半ば脅迫に近いというか、捜査を進めなければ自分の命を断つ、というもの。自分自身もどうしたらいいのか分からない葛藤が伝わってくるし、中学生の女の子が思いつく限りの抵抗だったと思うと苦しくなる……。

 

トロイメライ(夢)(シューマン:子供の情景 OP.15)

トロイメライ(夢)(シューマン:子供の情景 OP.15)

  • エヴァ・ポブウォツカ
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ここでBGMとして流れるピアノ演奏が、当時からとても印象に残っている。この楽曲はピアノ独奏曲「子供の情景」第7曲「トロイメライ(夢)」という。トロイメライとは夢想に耽ること、空想することといった意味がある。作曲したロベルト・アレクサンダー。シューマンによると、「子供の情景」は「子供心を描いた、大人のための作品」としての意図が強くあるとのこと。

 

実加にとって父親と会うことが出来るのは、自身の記憶の中だけ。父と遊んだ海岸を辿り、父の面影を感じとることしかできない。それはまさに「夢想」。父親の無念を晴らしたいけど、誰にも頼ることができないもどかしさ。かといって、今の自分に出来ることは何もない悔しさ。堂々巡りするジレンマに苦しむ実加の心情を、繊細に描いているなあと。

 

 

 

「人が一人死ぬなんて、どうでもいいことかな…。」

 


ここで横からすっと自然に現れたのが、雄介オダギリジョーだった。

 

五代雄介という人間にどうして惹きつけられるのか、その問いに対する一つの答えが、ここで示されているんだと感じる。普通なら出来そうにないことも、雄介になら実現させてしまう不思議な力があるんだ、と。ただ、そのさじ加減って、結局作り手の意識でどうにでも描けるわけだけど、そこに納得感を積み重ねられるのが荒川稔久氏の脚本の凄さなのだと思う。

 

 

実加の行方が分からなくなった時に、雄介は自分に任せてほしいと言った。桜子さん村田和美に古代文字の解読を、一条さん葛山信吾には未確認生命体第14号の捜索を続けるように説得した。自分に今出来ることをする、これは「普通に考えて、普通にする」という言葉にも通じるところで、重ねられた雄介への信頼があってこそ任せられたわけなのだと。

 

一人の人間として、実加と対等に向き合う雄介。この時の彼は、ヒーローでもないし大人でもない。寄り添って同じ立場になれることが、雄介なりの優しさなのだ、と。変に近づき過ぎず、二人の間にちょっと距離があるのが良い。

 

 

 

「信じて!皆やる時はやってくれるよ。そして君にもいつか、なんかやる時が来ると思う。」

 

 

 


バチスは次の標的であるクウガ=雄介の命を奪うべく、その時を虎視眈々と狙っていた。ここで上手すぎるポイントがあって、雄介はクウガへ変身するのに2時間のタイムラグがあって、かつバチスは自分の針が回復するのに時間を要している。その間に実加と雄介の作劇を描き終えることで、残るクウガとバチスの決着に盛り上がりを収斂させていく。

 


そして駆けつける一条さんから、次の標的が自分だと知る雄介。

ここからの変身シーン含めてのプロセスが、全て秒単位で名シーンの連続。

 

 

出現させたアークルが緑色になり、「変身!」の掛け声とともに砂塵が雄介の周りで竜巻を描く。突風が吹き荒れる中心に顕現するのは、緑の戦士ペガサスフォーム。

 

邪悪なるものあらば、その姿を彼方より知りて疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり

 

ボディに海面からの光の反射が重なってなんとも神秘的だし、ここの変身プロセスは何度見ても息を呑んでしまう。そして桜子からヒントを得た一条が、クウガに拳銃を投げ渡す。するとその拳銃がまたたく間に姿を変えて、専用武器のペガサスボウガンへと変化する。ここからBGMは一切流れず、聞こえてくるのは浜風の音やさざ波の音。五感の発達したペガサスフォームと視聴者の感覚が一体となっていく。

 

 


ここからのシーンが!!!!

 


最高!!!!

 

 

最高of最高……。

 

 

 


空高くから狙いを定めるバチスを、ペガサスフォームが発見。が、それと同時にバチスが針を発射する。しかしクウガは右手の2本指で受け止める。そして針を捨て、その挙動のまま右手でトリガーを引き、上空に向けて照準を合わせる。

ここから放たれる弾丸が「ブラストペガサス」。

 

 

 

 

 

職人でしょ……。

 

 

 

匠の技よ……。

 

 

 

 

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リアタイしていた幼稚園児の頃を振り返ってみると、クウガって手にしたものを武器に変化させるので、落ちている木の棒があれば、ごっこ遊びでオモチャがなくても困らなかったんですよね。だけど、ペガサスボウガンだけは素体である拳銃からの変化が大きかったのと、弓矢と銃を混ぜ合わせた独特なデザインの代物も全然なかったので、当時親に買ってもらったのは良い思い出です。あと海へ遊びに行った時に、このシーンを再現するため、水鉄砲でも浮き輪でもなく、ペガサスボウガンの玩具をまず持っていくような男児でした…。

 

 

大人を信じることに希望が持てた実加。
そんな彼女が自分の出来ることを見つけるのは、もう少し後の話。

 

次回は雄介の妹、みのりを中心としたドラマが描かれる。
クウガとして戦い続ける兄に何を思うのか。

 

それでは次の更新で。

 

 

 

(夏目実加を演じられた竹島由夏さんは、今も俳優を続けておられるそうです。応援しています。

 

 

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(↑第9話の感想はこちら)