(↑第8話の感想はこちら。)
今回の第9話、続く第10話のキーパーソンとなるのは、五代みのり(葵若菜)。雄介(オダギリジョー)にとって唯一の肉親であり、両親を早くに亡くした二人にとって互いはかけがえのない家族である。だからこそ、強い信頼関係を築き上げていることが、これまでのエピソードでも描かれてきた。雄介がクウガとなって戦うことを打ち明けたときもそれ以上深く質問をしなかったり(第2話)、戦い続ける雄介を心配する桜子さんに「普通に考えて、普通にすれば良いんです」と逆に励ましたり(第6話)、懐の大きな妹という感じだった。
妹のいる仮面ライダーといえば、真っ先にV3が浮かぶ人も多いだろう。V3へ変身する風見志郎はその妹と両親の命を奪われてしまい、デストロンへの復讐を誓うのは有名な話だが、「アギト」の翔一にも姉がいて自ら命を絶っているように、仮面ライダーの兄妹や家族は悲しい結末を辿ってしまうことが多い。仮面ライダーは孤独であり、その悲哀を背負わせるための措置と言えるのだが、その流れを汲んでみると、主人公に唯一の家族として妹がいることは、どういう意図なのだろうか……と邪推してしまった視聴者もいたのではないか、と。
本編を振り返ってみると、みのりが未確認の事件に直接関わることはなく、健在のまま終わることができたのは安堵できるポイントだったり。ただ、みのりの勤める保育士という立場を通じて、子ども達の心の機敏であったり、大人たちの守るべきものが何なのかを浮き彫りにする点で、『クウガ』のドラマパートにおける重要な役目を担っている。
「(4号には)いい人でいて欲しいよね」
保育園の園児たちに「4号が人間の味方なの?」と聞かれた時に、みのりの口から出た言葉で、桜子さんに語ったときのような自信を持てず、あくまで「そうあって欲しい」という願望。こうしたセリフ一つ一つから心情の機微が表れているところに、グッときてしまうんですよね……。人を殴ることすら躊躇うような優しい兄が、誕生日も忘れるほど自分を顧みずに、日夜問わず戦っている。兄が兄でなくなり、どこか遠くに行ってしまうかもしれない恐怖。でも、誰かがやらなければならない責務であり、兄が途中で投げ出すはずもない。
#クウガ20周年配信 「未確認生命体」をわざと「未確認体生命」と言い間違える園児。荒川さんらしいこだわりです。#クウガ#超配信 #kuuga#nitiasa#クウガ20周年
— 高寺成紀☺4月30日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM (@taka_69s) 2020年10月10日
ただの人間が変身して怪人と戦う日々を送っていること、それがあらためて「普通」ではないのだと描くことで、雄介が背負う覚悟の高さを現しているのが上手いな、と。そのみのりが抱く心配とは裏腹に、世間ではクウガが第4号として新聞の一面を飾っている。おやっさん(きたろう)が好奇心で収集したスクラップで、みのりの疑念に拍車をかけてしまうのが、何とも言えない。
警視庁では、未確認生命体の対策会議が行われていた。この会議シーンだけを見ていると、仮面ライダーの番組だということを忘れてしまうくらいに、その描き方が刑事ドラマのそれに近い。擬似的な長回しのカットが続き、刑事の顔がアップになっては、量が多いセリフの掛け合いも当たり前。
この会議で、話しあわれたのは以下の4つ。
・アジトの存在が確認。しかし所在がばれると場所を変えるのはなぜ。
・彼らを取り仕切る“ボス”がいる(=バラのタトゥーの女の存在)
・訓練により警察犬のミカド号が未確認生命体の匂いを嗅ぎ分けることに成功
・科警研が対未確認生命体用の毒ガス弾を開発。
#クウガ20周年配信 警察犬を訓練してきた「しばさき君」は『仮面ライダーセイバー』の柴﨑監督に由来してます。#クウガ#超配信 #kuuga#nitiasa#クウガ20周年
— 高寺成紀☺4月30日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM (@taka_69s) 2020年10月10日
特にアジトの存在がバレると姿をくらましてしまうというのは、本編を全て見終えた状態だと納得しかないんですよね。彼らの行う「ゲゲル」の意味がわかった時に、点と点が繋がっていくんだけど、早々にそのための仕込みがあったんだな、と。また、グロンギの人間世界への順応ぶりも板についてきており、特にカメレオン種のやつが言う「ルールはルールだ」というセリフも印象的。
そして今回、ゲゲルへの参加権を受け取ったのは、イカの特性を持った未確認生命体第21号=メ・ギイガ・ギ。メの集団になると人間体でも装飾品が多くなり、少し派手な見た目になる傾向があるのだけど、その中でも今回のギイガは、人間体の方が怪人になった姿よりも不気味さを感じさせられる稀なグロンギの一人。口は紫色で塗られて、白装束にレザーのパンツスニーカーを履くというどう見てもヤバい奴が、水の中から鉄柵をつたって這い上がってくるんだから、もうトラウマでしかない。
被っている白い帽子からピエロの印象も抱かせるので、少しコミカルにも思えるけど、殺しの手口はかなり残酷。口から粘着質の爆弾を吐き、それが付着すると立ちどころに爆散する。最初に被害に遭うのが女子高生というのもあって、叫び声と逃げる姿がとても生々しかったのを覚えている。
#クウガ20周年配信 ちょいダンバインっぽい顔のメ・ギイガ・ギ😆#クウガ#超配信 #kuuga#nitiasa#クウガ20周年
— 高寺成紀☺4月30日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM (@taka_69s) 2020年10月10日
(↑人間体を演じられていた白井雅士さんのTwitterアカウントはこちら。)
次に場所を変えて、港近くの宅配業者たちを襲うギイガ。しかし間一髪、襲う寸前でトライチェイサーに乗った雄介が到着する。規則的に行われるグロンギの殺しをいかに防げるかどうか、初動の動きにかかっている事を考えると、雄介の機動力の高さにどれほど救われているだろう。
雄介はクウガへと変身し、ギイガと交戦。イカの能力を有するためギイガの体は柔らかく、クウガの打撃を尽く吸収してしまう。この時の「効かない!?」っていう説明セリフが全然説明っぽくないのが、すごくリアルで良い。戦闘シーンを見返すと、ギイガは体が軟体であることに加えて、クウガを格闘で圧倒していることが分かる。爆弾で敵を怯ませて、相手からの打撃は通さず、転じて攻撃に変わると腕っぷしで圧倒する。実はかなりの強敵だったんじゃないか、と。
#クウガ20周年配信 ギイガの爆球攻撃は、画づらを派手にしたいという渡辺監督の要望を取り入れたものだったと思います。#クウガ#超配信 #kuuga#nitiasa#クウガ20周年
— 高寺成紀☺4月30日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM (@taka_69s) 2020年10月10日
そしてギイガの口から放たれる爆弾が、クウガの右肩へ被弾し、ショルダーアーマーが溶けてしまう。それでも背後に回り込み羽交い絞めからパンチを打ち続けるクウガ。演出の妙というか、ここでクウガの場面、みのりの場面、警察によるアジト強襲が交互にカットインする演出が、ギターのBGM演奏とともに流れるのが最高なんですよね……。相手に打撃を加える雄介の掛け声が反響し、不安な表情を浮かべるみのりが外を見つめる。一方ミカド号が未確認のアジトを見つけ、杉田さん達が突入する臨戦態勢で待機している。
みのりの不安も膨らみつつ、
ギイガに苦戦するクウガ。
未確認のアジトを前に緊張状態の警察。
10話で一体どう物語が動いていくのでしょうか。
それでは、次の更新で。
(↑第10話の感想はこちら)