感想『仮面ライダークウガ』EPISODE 18「喪失」

 

 

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(↑第17話の感想はこちら)

 

 

今回の第18話そして第19話は、『クウガ』という作品において大きな分岐点になったエピソードだと思っている。あの衝撃の展開をリアルタイムで浴びた時のことを未だに覚えているし、これから先も忘れることはないだろう。こうして毎週感想を載せている自分の筆圧に、いつにも増して力が入ってしまう。

 


その衝撃の展開とは、主人公の死。

五代雄介の死である。

 

 

冒頭、雄介(演:オダギリジョー)がポレポレの前でストンプを練習している。ストンプとは廃材やドラム缶を楽器に見立てて演奏するストリートミュージックの一種で、これをわかば保育園の子どもたちに披露するのだという。今思えばこんなにも分かりやすいのはないだろと言わんばかりに、フラグが立ちまくっている。ちなみに自分はこのシーンをまねて、キッチンに吊るしてある鍋やフタを箸でバシバシ叩いていると母親に本気で怒られた事がある。

 


その後、未確認生命体の出現を知らせる連絡がポレポレに入り現場へ急行する雄介。正直ここまではいつも通りというか、未確認への対応として変わりない当然の流れである。だからこそその後の展開であらためてハッとさせられるが、クウガグロンギの戦いは常に命懸けなのだということ。未確認生命体という異形の怪物に立ち向かえるのは、現状クウガのみ。視聴者である私たちは自然と「クウガは必ず勝つだろう」「だってこれはヒーロー番組なのだから」という認識をもっているだろう。しかしクウガと警察が挑む戦いは「必ず勝たなければいけない戦い」なのであって「必ず勝つことができる戦い」ではないのだ。

 


グロンギは地球上の生物をモチーフに能力が付与されているが、数は少ないながら植物の能力をもつ未確認生命体もいる。一人はグロンギを束ねているB-1号=バラのタトゥーの女(演:七森美江)。そしてもう一体が今回登場するキノコの能力を持った未確認生命体第26号=メ・ギノガ・デ(演:青山雄)。人間体の姿は男性と女性の間にある中性的な見た目をしているため、これもまた唯一無二の存在感を引き立たせている。口から猛毒の胞子を吹き出し、それを体内に取り込んだものは臓器が内部腐食を起こして死に至る。軽く口づけさえすれば標的になった人間はその場で即死するという恐ろしい能力だ。

 

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その一方でギノガ自身はさほど強くはなく、格闘戦には長けてないのだろう。マイティフォームの打撃を受けて相当怯んだ様子を見せていたし、そのまま押し切れば勝てそうな雰囲気はあった。さらに科捜研の調べにより、キノコの生育環境に近い場所を好むためビル街の室外機を根城にしている事が警察にもすぐ特定されてしまう。そのため敵としての難易度は、正直なところズ集団と変わりないのでは?と思ったりもする。しかし最大の武器である猛毒が強すぎるその一点で、クウガも警察も苦戦を強いられてしまった。雄介もギノガ人間体に遭遇した時から警戒していたが、懐に入られた瞬間に猛毒を流し込まれてしまう。たったあの一瞬だけ、そこからあの衝撃の展開に繋がっていく。

 

 

突如クウガの声が息苦しさに変わり変身は解除。雄介の目は見開き、口元は青ざめて地面に這いつくばってしまう。呼吸が肺を通らず喉元でせき止められているような苦しさが画面越しに伝わってくる。このシーンを初めて見た時に、いま自分が『仮面ライダークウガ』を見ているという認識が消し飛んでいた。目の当たりにしているのは、今にも死にかけている青年の姿でしかなかった。工事現場用の柵にもたれかかるように倒れ込むアクターの富永さんの演技が素晴らしい。

 

今回特に顕著に現れたが、オダギリジョーの声の演技はあまりにも上手すぎると感じている。戦うシーンのアフレコでは息切れを起こす程全力で演じていたのは有名な話だが、クウガの動きに合わせた息遣いや声の出し方にまで血が通った熱量を感じるのである。特に今回の死に際の呻き声は演技とは思えず、彼の表情も相まって視聴者に鮮烈な印象を与えた。

 

 

同世代の友人と『クウガ』の思い出話になった時に、このエピソードをリアタイで見たのがトラウマとなり、これ以降本放送を見れなくなったという話が出たことがある。今となっては笑い話にできるが、あのシーンを初見で浴びると確かに脳裏に焼きつくほどの衝撃だったと言って過言ではないだろう。

 

「ヒーロー番組」の定番を覆すべく様々な試みが行われた『クウガ』において、雄介が倒される展開はその最たるものだったと思う。「ヒーロー番組だから主人公は死なない」「ヒーロー番組だから主人公が倒されてもすぐに復活する」視聴者が無意識に抱いていた約束ごとにあらためて向き合い、徹底してリアリティを追求した制作スタッフの執念すら感じさせる。

 

人間の生と死に向き合っているという意味では、主人公である雄介に限らない。杉田(演:松山鷹志)が墓参りに行ってきたと榎田(演:水島かおり)に語るシーンについても触れておく。第5号=ズ・メビオ・ダに襲われて命を落とした警官が死んで、同じ現場に居合わせて第4号に助けられて生き残ったと語る杉田。劇中では名も無き市民が何人も死んでいると同時に名も無き警官たちも多くの命を落としている。その事実にフォーカスを当てた描写が度々挟まれることを、しっかり受け止めておきたい。

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雄介が危篤状態だと知り、駆けつける桜子(演:村井和美)とみのり(演:葵若菜)。彼が倒れた瞬間に居合わせた一条と比べると、その反応が微妙に違っているのが面白い。桜子に関しては心配と不安は抱きつつも、碑文の解析を通して現状を打開する策がないか探す決意を固め、みのりは少し考えた後にわかば保育園に戻っていく。そして医師の椿(演:大塚よしたか)も最善を尽くすし、一条は未確認生命体の対処に奔走する。今の自分が与えられた場所で自分にできることをやる、絶望的な状況にあっても決して諦めない大人としてのプロフェッショナルを感じるシーンである。

 

 


クウガが不在の中、警察は未確認生命体第26号とどう対峙するのか。


そして病室に響くのは、心停止の音。


次回へ続きます。

 

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(↑第19話の感想はこちら)