
(↑第18話の感想はこちら)
メ・ギノガ・デの猛毒により危篤状態に陥った雄介(演:オダギリジョー)。クウガが不在のまま未確認と対峙する一条(演:葛山慎吾)と警察。雄介の復活を信じて自分に出来ることを続ける桜子(演:村井和美)とみのり(演:葵若菜)。そしてついに恐れていた事態が発生する。
午後7時44分
五代雄介、死亡
雄介のバイタルが低下し心停止した電子音が鳴り響いて幕を閉じた第18話だったが、この時ほど「つづく(古代文字)」のテロップに声が出たことはなかった。なんてタイミングで終わるんだ……と。そして次回予告を見ても雄介の姿は一切出てこず、来週からの『仮面ライダークウガ』はどうなるのだろうと本気でヒヤヒヤしていて、次から誰がクウガに変身するのか親に真剣に聞いていた事を思い出す。椿(演:大塚よしたか)が懸命に蘇生措置を行う姿が、今まさにただならぬ展開が起きているという説得力となっていた。
#クウガ20周年配信 心停止を知らせる音は前回ラストのものと変わっていますが、前回の音がドラマで良く使われてきた音、今回のものが実際の機器の音ということで、リアルを追求する石田監督的には後者を選んだそうです。#kuuga#nitiasa#超配信#クウガ20周年
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年11月14日
雄介が死んだという報せを受けて、一条はどんな気持ちを抱いたのか。雄介がクウガとして戦うことになった時、初めて協力したのは一条であると同時に一番反対していたのも彼だった。たとえ力を持ったとしても雄介は一般市民であり、そんな者が怪物との戦いに関わる事は許さなかった。しかし雄介の覚悟を受け取り、共に戦う決意を固めてここまでやってきた。
確かに未確認生命体を倒しているのはクウガだが、トライチェイサーがなければ第5号=メビオの追跡は不可能だったし、第14号=バチスを倒せたのは一条から拳銃を預かったからだ。常に最前線で戦い生死を分ける瞬間に何度も何度も立ち会っていたからこそ、一条の心中として浮かんできたのは「悲しみ」よりも「後悔」だったのではないだろうか。自分が断固として拒否していれば、彼をこんなことに巻き込まなければ、ついに最も恐れていたことが実現してしまった。
そんな心情を表現したのが、椿と一条が電話越しに会話するシーンである。椿が一条に伝えている内容は聞こえてくるのに対し、車内にいる一条の応答する声は聞こえてこない。椿が毅然とした声で雄介の死亡を伝えた時に、悲しみを露わにするのではなく、グッと目を伏せて冷静であろうと努めている。車の中にいるというのが、外界と遮断されて非現実にいるような、受け止めたくない事実が一条にのしかかっているように思える場面だなと。この直後、杉田(演:松山鷹志)から伝達を受けても平常通りに振る舞おうとするのが、視聴者からすると胸も痛いし心も痛い。
#クウガ20周年配信 一条がパトカーで椿と電話で話すシーン、一条側の音声はオフになっていますが、脚本には一条の台詞も書かれていました。本読みの際、二人のやり取りを見た石田監督が閃き、ご覧頂いたような演出になりました。#kuuga#nitiasa#超配信#クウガ20周年
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年11月14日
主人公が死ぬという展開は、後年の仮面ライダー作品でも用いられてきたトピックだ。『ドライブ』の泊進ノ介や『ゴースト』の天空寺タケル、そして『ギーツ』の浮世英寿などが挙げられるだろう。これらの展開は主に最終フォームの初登場回や最終回が近づくクライマックスに持ってくることが多い。主人公の損失は物語の根幹に関わるトピックなので、それは当然のことと言えるだろう。
それらと比べてみると『クウガ』における「喪失」「霊石」は、かなり異質なエピソードだとあらためて感じる。それは主人公が死んだのにエモーショナルな演出が全く施されないところにある。雄介が死んだにも関わらず、未確認の捜査という物語の軸は淡々と進んでいく。病室でもただ静かに時が流れていくように、BGMすら流れてこない。
受け取り方によってこの演出が物足りないと感じる人がいるかもしれない。先に平成二期仮面ライダーの展開を見ていて、実際『クウガ』を後追いで鑑賞された方にそんな意見を持っていた方を何人か拝見したことがある。しかし自分としては、雄介が死んでも淡々と進む物語にこそ意味があったと感じている。
雄介が主人公であっても一人の人間である事に変わりはなくて、そこに敢えて大きな意味をもたせないことで人の命が終わる呆気なさや悲しさ、それでも日常を続けなければならない辛さにフォーカスを当てた演出だったのだと。雄介が死んでも未確認生命体の凶行は続くからこそ警察は捜査を続けていく。そして古代文字の研究も保育園の仕事も、変わらず日常は回っていくのだ。
クウガを倒したことで勢いづいたメ・ギノガ・デは、なんと体質が変化。警察の特殊ガス弾に耐性をつけて、胞子は高温状態じゃなくても毒性を発揮する事が可能。そして口から胞子を散布するようになり、ガスマスクを貫通する程の有毒性を得た。研究によればキノコは刺激を受けて著しく成長することが証明されており、例えば物理的・電気的な刺激を外部から加えると傷の修復を促すために菌糸が活発に働くらしい。ギノガの体質変化がこれを基にしているのであれば、ダメージを受ける程に強くなっていく。この毒の胞子を無尽蔵に放出出来るようになれば……東京中いや関東全域を手にかけることも容易ではなかっただろう。
追い詰められていく一条や捜査員たち。
しかしギノガがその背後に目を向ける。
駆けてくる謎の影を見てギノガがはっきりと叫ぶ。
「クウガ!?!?」
その声に一条は目を見開くと、何かがギノガに真正面から体当たりして掴み掛った。
それは未確認生命体第2号。
仮面ライダークウガ グローイングフォームだ。
桜子が解き明かした碑文には次の一節があった。「戦士の瞼の下、大いなる瞳になりし時、何人たりともその眠りを妨げるなかれ」雄介の体内を蝕む毒素を排出するために、アマダムが一時的な仮死状態を作り出したのである。自分の与えられた場所で出来ることを精一杯やる、そのおかげでクウガ復活の糸口を得た。各々の努めをしっかり果たす格好良い大人というのはまさにこのことを言うのだろう。椿が行った治療は結果的にクウガを手助けすることになるし、みのりが保育園に戻ったおかげで園児たちは守られた。そして一条や捜査員は現場の最前線で戦ったおかげで、クウガ復活に至るまでをつなぐことが出来た。個々でみると関係がないように思える事柄が一つ一つ積み重なったことで、雄介の復活に繋がったのだ。

前話から今回のBパートまで漂っていた暗い雰囲気を一気に消し飛ばすかのように、颯爽と現れるクウガ。こんなにもヒロイックな登場があるのだろうか。上手いのが、変身後の姿から現れたことで雄介をまだ出さずに焦らすところ。もしかして雄介が変身していない可能性も捨てきれない、微かにそんな不安さえ過ってしまう。第2号が現れたことに疑問を抱く杉田に向かって、「白い4号です!」と食い気味に発する一条の、”彼”が戻ってきたことの混乱と高揚の入り交じった声色はやっぱり何度聞いてもいいなあと。『クウガ』という作品内で一番好きなセリフかもしれない。
#クウガ20周年配信 杉田「2号か?」一条「白い4号です」のやり取り、荒川さんの真骨頂と言えますよね👍#kuuga#nitiasa#超配信#クウガ20周年
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年11月14日
突然だが自分がクウガの形態で一番好きなのは、グローイングフォームなのである。正直どのフォームも好きなので一番を考えるのは不毛だが、一つ選ぶとしたらこれになるだろう。白いクウガは基本形態であるマイティの下位互換にあたり、スペックが全体的に劣ってしまう。そのため第1話・第2話で変身はしたが辛勝もしくは惨敗という結果を残しており、これまでに登場したシーンでも、クウガが弱体化した演出として一瞬登場することがほとんどだった。前話だと、ギノガの猛毒を受けて赤から白に戻った後、雄介は人間の姿に戻っている。
常時より弱体化していること、雄介に身の危険が及んでいること、これらを視覚的に示す手段として、白いクウガの姿がロジカルに作用しているのが実に上手いなあと。そうした色変化に至るまでのこだわり自体が、『クウガ』という作品の真価を示している点がとても好きなのかもしれない。
そして今回のエピソードのグローイングフォームが活躍する回を設けることで、決して白いクウガに試験紙としての役割しかないのではなく、皆の笑顔を守るために死の淵から蘇った姿という意味も付加されたのだ。『超クウガ展』のティザーポスターで青空をバックに立つグローイングフォームが出たことを喜んだ人々が思い出したのは、やはり今回の活躍だったのではないだろうか。
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— 超クウガ展【公式】 (@kuuga25th_ten) 2025年1月29日
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ギノガを追い詰めついに必殺のキックを繰り出すも効かず、耐えられてしまう。もう一度間合いを取って、再びキックを打ち込んでもグローイングフォームの力ではギノガを倒せるほどの封印エネルギーを流し込むことが出来ない。万事休すかと思われた時に、右足のアンクレットが一瞬赤く光り、BGMが一気に転調し逆転の兆しが見えるこの演出。何年経っても何度見ても、これほど痺れる瞬間はない。まじでここのシーンかっこよすぎない????ついに三度目にして打ち込んだキックが致命傷となり、ギノガを撃破することが出来た。

仮面ライダー公式では今回の技名記載がなく、「3連続の必殺キック(マイティフォームに回復しつつあるグローイングフォームのキック)」という表記になっている。過去に発売されたゲームでは”グローイングキック”の名称が使われたらしいのだが、自分としてはこの一瞬だけ力を取り戻したという解釈なので、”強化マイティキック”なのではないかと感じている。
クウガの変身が解除され、最後の最後に雄介が登場。「遅いぞ五代!」と声を大きくしていう一条がどこか嬉しそうで、去り際のサムズアップが第4話を思い出させてくれる。
クウガの戦いはまだこれからも続いていく。
それではまた次の更新で。
(↑第20話の感想はこちら)