
(↑第21話の感想はこちら)
バイクに乗った謎の男(演:小川信行)による妨害により、未確認生命体第3号=ズ・ゴオマ・グ(演:藤王みつる)を取り逃してしまったクウガ。今回はすぐに立ち去った謎の男も、そして逃げ去ったゴオマも、今後再び登場し雄介(演:オダギリジョー)の前に立ちはだかるが、それはその時に詳しく触れておきたい。
城南大学の研究員であるジャン(演:セルジュ・ヴァシロフ)が今後深く関わる事になるその親子が科警研の榎田(演:水島かおり)と息子の冴(さゆる)(演:新穂健太郎)である。21話でも描かれていたが、榎田は未確認生命体についての調査が立て込み連日の徹夜で昼夜逆転の生活を送っている。その為さゆるとの約束をすっぽかしてしまう事もしばしば。さらっと言及されているが、未確認生命体の出現以降、都内の小学校は常に集団登校と集団下校が義務づけられている。
約束事というものは約束された側は覚えているもので、特に子供だと尚更である。さゆるにとっては付録を一緒に作るという些細なことでも大切な約束であり、少しでもお母さんと一緒に遊びたいんだという切実な思いが伝わってきて辛くなってしまう。しかし榎田が激務になるのも当然で、1分1秒を争う未確認生命体への対策を科学的な観点で早急に進めなければならない。そこへクウガとゴウラムの研究も重なってしまう。確かにそこまで自分の生活を犠牲にしてまでしなくてはならないのかと思うところだが、そのおかげで未確認生命体の特性を把握し警察は対応することが出来ているのも事実なのである。どちらも正しくて間違いがない、だからこそ苦しい。電話の奥にある悲しみを察知したジャンは榎田親子とどう関わっていくのだろうか。
自分が特に愛好しているが故なのかもしれないが、『クウガ』に登場する怪人は他作品に比べてとても印象に残っている。人間体の姿であったり特性やゲゲルの方法など、思い出す時のフックが多い。その理由を考えた時に一つ発見したことがある。それは『クウガ』の作劇構造が「ウルトラマン」に似ているということである。
「ウルトラマン」のオーソドックスな流れとして、街に怪獣が出現し猛威を振るうと科特隊が到着、科学力や専門家の知恵を結集しその対応策を練る。その過程で科特隊メンバーのドラマが描かれたり、メッセージ性のあるテーマが込められたりする。そして人間ではどうにもならなくなった時に、ウルトラマンが現れて怪獣を退治して解決する。全話がこのフォーマットに則っている訳ではないが、おおよそこの流れで展開していくといっても過言ではない。いわゆる「ウルトラマン」は怪獣が主役だと言われているのは、まさにこのことである。
この作劇構造はそのまま『クウガ』に当てはめることが出来る。未確認生命体が出現すると、殺人の法則を雄介や警察が解読し、怪人の特性は科警研が分析を行う。そして古代文字からクウガの手助けになる箇所はないかを桜子さんが解析する。ドラマとして未確認生命体への対策を軸にしつつも、主要キャラもしくはサブキャラの物語を枝葉にしていく。
今回の21話そして22話はこのフォーマットが色濃く出ていて、ガルメの透明化能力への対応策を警察・科警研・考古学の観点から調査していく。メインライターを務めた荒川稔久氏が長年ウルトラシリーズの脚本を執筆したいと仰っているが、実はかなり相性が良いのではないかと感じている。果たしてこれが叶う日はくるのだろうか。自分は長年待ち望んでいる。
今回ゲゲルを行うメ・ガルメ・レは人間の言葉を流暢に話すため、それを通して警察はグロンギ達の全貌を少しずつ把握していく。視聴者という神の視点ではグロンギが人間の言葉を話すことは周知の事実だが、劇中の登場人物が初めてその事実を知るという局面はやはり緊張感が伴うのである。
彼らが行うゲゲルとは、”狩り”のことである。獲物である人間を殺害した数を競い、自らが課したノルマを達成することが出来れば、昇格することが出来る。そして昇格した先に「資格」を手にすることが出来る。未確認生命体が人間を殺す理由は、ただの娯楽。競い合い楽しむものであり、それ以上の理由はない。ガルメが警察の前でこの真相を話すシーンは自分の中でとても印象に残っていて、せせら笑いながらこんなにも恐ろしい事を平気で言えてしまうグロンギに恐怖を覚えた。彼らにとってゲゲルとは、この世界を支配するための足掛かりではなく人間への復讐や私怨がもたらしたものでもない、命を弄ぶための娯楽にすぎない。
#クウガ20周年配信 幾ら真剣に作っても「子供番組はちゃちくて下らない」と思われていた時代。それも一面真実と考え、安直に見えない番組作りを目指しましたが、例えば着ぐるみ怪人が人に対し流暢に台詞を喋ると珍妙に見えると思い→そこはお喋りキャラのガルメに絞る事で際立たせないよう心掛けました pic.twitter.com/m0Xlt8Wg8l
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年11月25日
しかし、警察も二度と負ける訳にはいかない。ガルメの透明化能力をスタングレネードの強烈な発光で打ち消すことに成功。自らが優位に立っていた状況が逆転すると、元のグロンギ語で荒々しい口調になるのはガルメの小物加減をよく示している。ただし打ち消す事が出来るのは約5分間のみ。このメカニズムが判明したのは科警研が徹夜で検証を重ねた結果だったというのは、榎田が所員と話すシーンで分かる。
#クウガ20周年配信 透明化するガルメを可視化させて倒すというのは、ゴルバゴスに対する「レインボー作戦」2000年バージョンと言えるのかも知れません😉#kuuga#nitiasa#超配信#クウガ20周年
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年11月21日
そこへ雄介が現着。ここの表情がいつにも増して真剣に感じるのは、やはり一度は取り逃してしまった悔しさともう二度は逃さない決意の表れのように思える。マイティフォームへ変身し交戦するが、制限時間が訪れて再び透明化してしまう。雄介はガルメと最初に対戦した時に、赤(マイティ)と青(ドラゴン)にしかなれなかったが、緑(ペガサス)になれる今なら倒せるかもしれないと一条に語った。さらにゴウラムの腕に書かれた碑文には「戦士よ 僕よ 手と手を繋げ さらば 大いなる飛翔 あらん」(日本語訳)と記されてあった。ここから導き出されるのは、空中からのブラストペガサスである。

『クウガ』が好きな方にはそれぞれに好きなブラストペガサスのシーンがあると思うのだけど(あることが前提のテンション)、もちろんバチス戦の初登場回で魅せた流れるような動作シークエンスも最高だし、後に出てくる空中前転からの超変身も大変格好良いのだが、やっぱり自分の中では今回のペガサスフォームがとにかく大好きで。
一条から預かった拳銃をボウガンに変化させ装填、現れたゴウラムの腕を掴んで上昇する。ペガサスボウガンを撃つにはトリガーを引かなければならないため片方の腕でゴウラムの腕を掴んでいる時点でクウガとしては不利な状況にあるのだけど、ペガサスが銃弾を絶対に外さないからこそ出来る戦い方なのが痺れるのである。超感覚で捉えたのちに「そこか!」から構えて発射、逃げるガルメに向かって放たれる弾丸の動線にカメラワークが切り替わって、奥にクウガそして手前にガルメが一緒に映ってから封印の紋章が浮き出るあの瞬間。ここまで決まったカットはないだろう。

#クウガ20周年配信 トライゴウラムへの合体パーツとしてでなく、ゴウラム単体での活躍も描いて欲しいという要請から考え出されたのが「クウガの飛行メカ」という設定でした。龍星王などで試みられた「メカの上に立つ」というビジュアル以外が模索された結果「ぶら下がる」に落ち着いた記憶があります。 pic.twitter.com/vKorW4XYNC
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年11月22日#クウガ20周年配信 ガルメを高空から狙うクウガの主観は渡辺監督が撮休日に単身、東京タワーに赴き展望フロアからハンディで撮った映像です。「予算的に空撮は困難」という制作部の判断に従い、ぼっち撮影を敢行、周囲に観光客がいる中、恥の感覚を捨て何度もカメラを振り回しOKテイクに至ったそうです pic.twitter.com/Q1BLOb7Ifl
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年11月23日
次回はメ集団最強のグロンギが登場。
そしてクウガにも新たな力が目覚める・・・?
それではまた次の更新で。
(↑第23話の感想はこちら)
