
(↑第32話の感想はこちら。)
『クウガ』もついに第32話を迎え後半戦がスタート。激化するゴ集団との戦いも熾烈さを極めていき、クライマックスに向けて静かにカウントダウンが始まるため物語の縦軸にも目が離せなくなってくる。というのは前提にありつつ、一言言わせて欲しい。
第32話と第33話。
どちらも面白すぎるんよ……。
(いやまあ『クウガ』は全部面白いけど)
あらためて振り返ってみるとこの二編は、クウガと警察の関係性に大きな分岐点を与える重要なエピソードであり、好敵手のバイク使いとの攻防戦というワンシチュエーションのみで描く緊張感が全編に渡って持続し、その先に与えられた新たなるクウガ専用バイクの登場でカタルシスが一気に爆発する。まあとにかく、とにかく面白すぎる……(語彙力の消失)。
サブタイトルの「障害」という言葉には、物事の達成や進行の妨げとなること、または妨げとなる原因という意味がある。ゴ・ガメゴ・レ(演:酒井一圭)を倒すために放ったライジングマイティキックの威力は凄まじく、中心地から半径約3キロ圏内に大きな打撃を与え、周辺地域の公共交通機関や建物に甚大な被害を与えてしまった。ここで非難が集まるのは当然警察なのだが、一連の被害は未確認生命体第4号の単独行動であると発表。ここにきて警察とクウガの協力体制は事実上の打ち切りとなり、BTCSを第4号に引き渡す計画も白紙に戻ることになった。
なんという歯がゆい結果なのだろう……と、幼心に全てクウガのせいにする警察とそんな展開にした作劇に憤ったものだが、今は妥当な判断だなと思ってしまうしそう理解してしまうほど自分も歳を重ねてしまったなあと。自分たち視聴者は神の視点として、雄介(演:オダギリジョー)やその関係者の活躍を知っているが、世間的に見れば至極真っ当な結果である。
上層部の理不尽な判断と未確認生命体第41号の犯行状況を鑑みて、一条(演:葛山信吾)はある決断をする。それは現場関係者にクウガ=五代雄介の正体を明かし、共同戦線を張るというもの。ついに一条が捜査本部のメンバーにクウガの正体を打ち明けるのだが、自分としては当時このシーンをかなり淡白に感じていた。なぜなら肝心の一条がどう打ち明けたのかは全く描かれなかったからだ。ついに正体を知ることができる桜井の驚く反応とか、まだ少し心配が勝る笹山さん(演:たなかえり)の表情を自分なら絶対に入れるなあとか考えていたのだけど、今なら”あえて”そこを省いたのかなと思えるのである。最前線で未確認と戦いを続けてきた一条の説得と提案に今さら異を唱える者はいないだろうし、そこにシーンを割くのなら別の箇所で活かそうというキャラクター達を信頼した結果なのかなあと。そのため次のシーンではバイクで走る雄介の元に杉田(演:松山鷹志)がパトカーで合流し、笹山から作戦説明を受けるのだが、ここのテンポ感が絶妙なのもいい。
#クウガ20周年配信 EP4で第4号に命を救われた杉田刑事と雄介との対面、胸が熱くなりますね😭#kuuga#nitiasa#超配信#クウガ20周年
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2020年12月26日
前回の31話で権利を手にしていたため、開幕から既にゲゲルを開始し始めていた未確認生命体第41号=ゴ・バダー・バ(演:小川信行)は、専用マシン"バギブソン”を駆り人間達に牙をむく。その方法はバイクに乗った人間をターゲットにし、とにかく運転席から降ろした後にバギブソンで轢き潰すというライダー達の尊厳を踏みにじった上で命を奪うこのやり方はまさに凄惨である。それを誰が見ても明らかな”仮面ライダー1号”モチーフの怪人にさせているというのは、本当に攻めているなあと。バダーはバイクで次々に移動し人間の命を奪っていくため、今すぐにその動きを止めて阻止しなければならない緊迫感がリアルタイム進行の『クウガ』ゆえに発生するのだ。
#クウガ20周年配信 バッタがモチーフのバダーとバヅーは仮面ライダーのオマージュで兄が緑色&真紅のマフラーなのはリミッター解除の印😆
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2021年1月2日
「ゲストが再登場する番組的には人気怪人も再登場」という発想でしたが、その源流はレッドキング二代目、更に兄弟という設定はウデスパー辺りが元かも知れません pic.twitter.com/krAjSTatuT
特に今回の31話において、クウガはほぼずっとトライチェイサーに搭乗し、バダーと激しいバイクチェイスを繰り広げる。このチェイスシーンを改めて見ると凄いことをやってる。なかなかのスピードで道路を並走したり、工場内ではバイク同士をぶつけ合い、とにかくバイクアクションをとことん極めて見た事のないものを作ろうという気概に満ちたシーンの数々に眼福でしかない。ここでドラゴンフォームがトライチェイサーを乗りこなしチェイスを繰り広げているのもワンポイントで、細かなフェティッシュをしっかり押さえてくれるのも素晴らしい。

(↑パンペーラ250。トライチェイサー・ビートチェイサー・バギブソンのベースとなりました。)
華麗なバイクスタントの数々を実現したのは成田兄弟であり、兄がクウガを弟がバダーを演じている。それこそ昭和の仮面ライダーでも派手なスタントは数多く生まれていたが、様々な制約や演者への危険も考えると再びそれをやるのは不可能に近い。しかしそれでも諦めないのがスタッフ陣で、当時の2000年に現代版でどうアップデートするのか導き出された一つの最適解がこれだったのだ。
その極めつけが海岸沿いの岩場で繰り広げられるバイクスタントである。劇伴は全く流れず激しくぶつかった時の金属音やタイヤが地面に降りた時の接地音、そして両者の吹かせるエンジン音がただただ轟く。ここのシーンは本当に固唾を飲んで見守るという言葉がピッタリで、実際に演じるからこそのリアルさや生々しさが画面いっぱいに伝わってくるし、実際バダーの方が一枚上手なこともありクウガがまた負けるんじゃないか……という切迫感で当時は本気でハラハラしながら見ていたことを覚えている。でもよくあんな岩場でスーツを着ながら派手なバイクスタントをやっていたとは……畏怖の念すら覚える。
ここで負けてしまうのか。
それでは、次の更新で。