
(↑第33話の感想はこちら。)
『クウガ』の感想を全話分書こうと決めた時に、自分が納得のいく形で書けるかどうかとても不安に感じていたエピソードがあった。それが今回の「戦慄」「愛憎」である。「仮面ライダー」という作品媒体の可能性を広げてきた『クウガ』にとって、この二編はその域値を最大限に広げてなし得たエピソードだと感じている。
当時見た時に感じた、恐怖・悲しみ・怒り・虚しさは自分にとって鮮烈な記憶として脳裏に焼きついていて、その思いをずっと抱えながら今日まで生きてきた。なんというか、単に衝撃を受けただけで終わらせられない終わらせたくないなと。そんな25年かけて自分の中に残っていた感情を言葉にして、ここに残しておきたいと思う。
そんな第34話はついに第0号が再び動き出し、いよいよクライマックスへ向けて物語が収束に向かっていく中、正式な協力関係を築いたクウガと警察の前に、史上最も卑劣なゲゲルを仕掛けるグロンギが現れる。
今回現れる未確認生命体第42号=ゴ・ジャラジ・ダ(演:大川征義)は、ヤマアラシの特性を兼ね備えているグロンギで、正直スペックだけでいえば他のグロンギに比べてむしろ劣るというか、そこまで強さを感じるグロンギではない。必ず武器を持つゴ集団の怪人にしては、針をダーツのように飛ばして行う攻撃では致命傷を与えるのは難しいだろう。そんなジャラジが何故ゴの階級にまで上がる事が出来たのかを考えると、彼の強さは自身の能力に対する理解度の高さと彼自身の本質にあるのではないかと感じる。

ジャラジの実行するゲゲルは肉眼では見えない極小の針を脳内に仕込み、ある一定の時間が経過するとサイズが大きくなり、内出血を引き起こし死に至らしめるというもの。しかし針を仕込むにしては、上述の通りジャラジは対面の戦闘だと勝ち目がない。そこで自身の俊敏性を活かして相手が気づかない内に針を仕込むため、対象と交戦することはほぼ皆無になる。この極小サイズの針を脳内で摘出するのは、あの椿(演:大塚よしたか)ですら不可能だと言わしめるほどにある。
また他のゲゲルと違って時間を要する点が特徴だが、一早く "ゲリザギバス・ゲゲル”に進みたい多くのグロンギにとって、それをデメリットと捉える方が少なくないだろう。しかしここはジャラジの内にある”弱い者を苛めて追い込むことを愉悦とする”本質と符合したのだろう。もう何度と見返しているにも関わらず、病室で死に直面した高校生が精神を破壊されていくあのオープニングは本当に寒気がするほど恐ろしいし、葬式に並んで高校生が涙を流す中に発狂する生徒が怯えるところは単純に怖かった。あれに快楽を感じているのがジャラジなのだ。
#クウガ20周年配信 ジャラジに狙われた「緑川学園」の校名は、1号=本郷猛を仮面ライダーに改造した緑川博士から、また転校生の「生田和也」は『仮面ライダー』の撮影拠点だった生田スタジオに、本郷の相棒・滝和也の名を合成して付けられたものです。#kuuga#nitiasa#超配信#クウガ20周年
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2021年1月9日
ジャラジの人間態は雄介よりも歳下にも見える若い青年の姿で、おそらく精神的には未熟というか指パッチンや爪を噛む癖を有しているのが見受けられる。そんな若い青年が命を弄ぶような行為をしているところで誰もが想起したのは、当時問題視されていた少年犯罪ではないだろうか。
1990年代後半から2000年初頭にかけて、世論は増加する少年犯罪における報道が過熱していたとのこと。特に世間を震撼させた神戸の事件以降、当時の青少年を一概に危険視する声も上がったり、ICチップによるテレビ番組の規制などが熱心に議論されていたらしい。「ゲームをやりすぎると現実と区別がつかなくなる」なんて親によく厳しく言われた事もあったが、その源流は当時の世相にも関係あったのかなと感じる。そんな背景がある中で2000年に劇場公開されたのが「バトル・ロワイアル」であり、奇しくもこちらも東映が制作を担っている。
そんな「バトル・ロワイアル」が12月に公開されたのに対し、今回のエピソードは10月に放送されているため実はこちらの方が先手だったのである。そして現在は時間帯が変更されているが、これを朝8時から地上波で全国に向けて放送されていたという事実がその重みを強くする。
『クウガ』の作劇はこちらが想定する程度のことは描いた上で更にもう一歩踏み込んでくるのが常だが、今回は特にその演出が際立っていたと思う。ゲゲルで死を迎える恐怖に耐えきれずに対象の高校生が自分で命を絶ってしまう、という展開は(誰がそこまでやれと……)と思わなくもないほどにキツい。もっと胸に重くのしかかるのが、この高校生が命を絶たなければ、ジャラジは唯一免れた転校生を狙う必要もなく足がつかなかったので、ゲゲルを完遂出来ていたかもしれないということまた、別の見方を加えるのであれば、今回のようなゲゲルは実行に時間がかかるため、クウガや警察の邪魔が入り失敗に終わってしまった時の予防策として、”あえて”転校生を生かしていた可能性もあったのではないかなと。ジャラジの計画性が高いことを思えば充分にありえる。

#クウガ20周年配信 今回登場する男子高校生達(病院で死亡した青年、告別式で慟哭した青年、別荘に避難した青年)は全員、このEP用に行われたオーディションに参加した若者達の中から選ばれました。#kuuga#nitiasa#超配信#クウガ20周年
— 高寺成紀☺ (@taka_69s) 2021年1月9日
間一髪で助けに入ったクウガは、
ジャラジの行う最悪のゲゲルを止めることは出来るのだろうか。
それでは、次回の更新で。