本当の戦いはここからだぜ! 〜第二幕〜

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感想『このテープもってないですか?』BSテレ東が年の瀬にぶっとんだテレビ番組を放映していた件について

 

 

 

俺、めちゃくちゃ井桁弘恵さんが好きなんですよ。(今更である)

 

 

このブログでもたびたび記事にしているように、井桁さんの売れっぷりはこの一年で凄まじいものがあります。冠番組の司会、バラエティ番組・ドラマへの出演、雑誌や広告への掲載など、一週間のうちに必ずどこかで井桁さんを見かけていると言っても過言ではないと思います。かくいう自分のHDD機器には「井桁弘恵」でキーワード登録をしているので、自動的に出演した番組はすべて録画済み。Twitterやブログに書いたりはしませんでしたが、それらの番組を見返して「カワイイ……」「アッ、ウツクシ……ウツクシスギル……」と独り言を呟きながらチェックする日々です。

 

kazurex1215.hatenablog.jp

 


その中で、井桁さんが出演されている”ある番組”が昨年の年末に放映されていました。

 

 


「このテープもってないですか?」

www.bs-tvtokyo.co.jp

 

 

 

BSテレ東で12月27日から29日の三日間放送されていた30分番組です。昭和に放送されていた番組の録画テープを視聴者から募集し、いとうせいこう井桁弘恵テレビ東京の水原アナの三人が当時の映像をそのままに振り返っていくバラエティ番組です。高度経済成長期の活気あふれる日本の映像が映し出され、高速道路の開通や大阪万博の様子など貴重な映像資料が登場します。なかには静電気治療や催眠療法などの”トンチキ”医療が施されている映像も出てくるのですが、良くも悪くも”昭和の残り香”を感じさせてくれるんですよね。

 


その番組内で視聴者から寄せられた一本のビデオテープが紹介されます。それが1985年に放送された『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』という深夜バラエティ番組です。女性アシスタントへのセクハラまがいな発言、背景に意味もなく座る膝丈ミニスカの女性コンパニオン、飲み会の悪いところを凝縮させたような番組構成は、現代の倫理観では絶対に受け入れられそうにない・・・。

 

dic.nicovideo.jp

(↑坂谷一郎氏の経歴はこちら。日本のマルチタレントの先駆けと言われている方です。)

 

ただ、いとうせいこうが話していたように、「この番組が求められていた時代が、日本にはあった」と。MCの坂谷一郎がもつ裏表のない人柄から滲み出てくる親しみやすさ、コメンテーター陣が楽しそうに番組を進行する雰囲気、見れば見るほど独特な味がするスルメ的な魅力に溢れているんですよね。

 


最初はこの時代錯誤すぎる番組に抵抗感を示していた井桁さんも、上述のような番組の魅力に気づき始めて、回を追う毎に徐々に楽しんでいる様子が伺えるんですよね。ワイプで抜かれた時の井桁さん、笑顔が眩しくて2000000000000000000点。当時の時代背景を知る意味でも、非常に勉強になりました。ビデオテープの映像が残っていることすら貴重なわけですから、年末年始のこのタイミングでぜひご鑑賞していただければと思います。

 

 

 

tver.jp

(↑TVerで無料配信中です。会員登録も必要ないのですぐに見れます!)

 

 

 

 

 

 

 

(以下に「このテープもってないですか?」の全話視聴感想を載せています。未視聴の方はご注意下さい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


やられた・・・。

 

なんちゅう番組を放送しとるんや・・・。

 

 


つまるところ「このテープもってませんか?」は、モキュメンタリーである。バラエティ番組の様相を呈しながら、なんと劇中で取り扱われる「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」という番組もフェイクで、動画の投稿者もパネラーの出演者も全て実在しない架空の人物である。

 

dic.nicovideo.jp

(↑ニコ動大百科にあるこのページも最後までお読み頂けると分かる。上に挙げた坂谷一郎のページも全てフェイクである。)

 

 

そうしたこの番組の”違和感”には、実は早々に気づいてしまう。第一夜の終盤で流される視聴者からの投稿映像が決定的ではあるが、番組全体の安っぽい空気感やMCとパネラーの作り込まれたトークなど、細部に至る詰めは少し浅いようにも感じてしまう。かくいう自分がこの番組の意図に気づいたのは、「坂谷一郎の〜」に登場したコンパニオンが知っているタレントだったから。そこで分かる自分もどうなんだと思うところだけれども・・・。

 


この意図が判明したことで面白さが半減するといったことはなく、この展開でどう着地させるのかに興味が俄然湧いてくる。サムネ画像を見ても分かる通りバラエティー番組というフレームが、この番組の”違和感”を上手く隠しているのが本当に上手い。過去にもこの形式のモキュメンタリーは存在するのだろうけど、それをテレビ東京という民放局で実現していることに意味があるのだと思う。このカムフラージュはまじで分からなかったし、自分のような井桁弘恵ファンが思いっきり面食らってしまうことを考えると、「やられた!!!!!」という気持ちにしかならない。

 


第一夜では、全体の80%ほどは一般的な番組構成で進行していくのだが、終盤に紹介された投稿映像にジャミングや音の乱れが生じており、重力法則を無視した不可解な動きや、言葉を何度も繰り返す投稿者の映像が映される。どう見ても尋常ではないのに、パネラーは何一つ触れない。いとうせいこうと井桁さんのワイプも、ここだけ切り抜かれない。ただ一人、MCの坂谷一郎だけは目と口を開けて茫然自失なまま。しかし次の映像に切り替わったら、元に戻っている。

 

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続く第二夜は、序盤こそ第一夜と同じような番組進行がなされていくのだが、またも不可解な投稿映像が映し出される。その度に女性アシスタントが呆然自失となり、放送作家も同じ轍を通ってしまう。投稿映像に共通しているのが、”黒い影””暗闇”という得体の知れない何かがいるということ。しかしそれが何を示すのか全く判明しない。エンディングではスタジオに超能力者が登場し、スプーン曲げを実演する。この最中に女性アシスタントだけが常に同じ方向を向いて何かを一転凝視している。これTVerだと分からないんですが、地上波放送版だと・・・。

 

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第三夜にもなると、初っ端からぶっ壊れて番組は始まる。いとうせいこうも井桁さんも録画映像の影響を受けてしまい、意味不明なコメントを連発。井桁さんに至っては突然ツボに入って笑い声を上げる始末。最終回を迎えた「坂谷一郎の〜」の出演者は全員”手遅れ”状態で、トーク内容の意味も分からない。抽象的で哲学的な詩を全員が連想ゲームしていくさまは、恐怖すら通り越して狂気に近いものを感じてしまう。そして投稿映像に潜む”黒い影”の進行度は加速していき、ついには「このテープ〜」の収録場所にも現れる。一体何がどうなってしまうのか、顛末も分からないまま視聴者の胸に不安と不快感だけを残して、この番組は幕を閉じた。

 

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この番組における恐怖の根源たる”黒い影”、でもその正体を突き止めることが重要なのではない。番組内には伏線や解き明かすキーワードも含まれているのだろうし、考察を突き詰めていくのもありだと思う。しかしそれをやったところで、意味はないだろうなというのが自分の考えだ。なぜあれを見て恐怖心を抱くのか、論理的に説明ができない。とにかく不安になるし、見続けると飲み込まれてしまいそうになる。私達にできることはこの得体の知れない存在が、深層心理にある恐怖心に訴えかけてくる現象を受け止めるしかないということ。成す術を全く持ち合わせていないのである。

 

 

自分はこの番組で久しぶりに頭をぶん殴られた面持ちである。どうか一人でも多くの方が、自分と同じように不穏な気持ちを抱きながら、2023年の年始を迎えて頂きたいと切に願っている。

 

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