(↑第11話の感想はこちら)
未確認生命体22号=ズ・ザイン・ダの猛攻により、クウガは完全に圧されていた。間一髪で串刺しにされることは逃れたものの、形勢は逆転しない。ザインの戦闘スタイルって反撃する余地を与えずに、攻撃を畳み掛けてくる嫌な戦い方だよなあ、と。ぶっ飛ばされては投げ飛ばされて、砂埃にまみれるマイティフォームの赤いボディが、この危機的状況の比喩に思える。
それでも突進してくるザインに、クウガは一瞬の隙を突いてマイティキックを叩き込む。この技自体は決まれば必ず相手を倒していた技だったし、これまでも各フォームに変身し敵の特性に合わせて戦えば負けることはなかった。それにマイティキックはこの時点で劇中最もグロンギを撃破した文字通り必殺技だったわけである。
しかし、その体には紋章すら浮かんでいないという絶望。
ここでもし、別の未確認生命体=メ・ビラン・ギの邪魔が入らなければ、クウガは最悪ここで倒されていただろうし、今度こそ腹部を串刺しにされていたかもしれない。そう考えるとズ集団最強のグロンギというのは伊達ではないんだな……と。注目しておきたいのが、不意打ちではあるがビランはザインの硬い体に傷をつけたということ。ここからもメの集団がズの集団よりも一枚上手なのが伝わるし、ザインにはオレンジの光、ビランには緑の光が当てられる演出が印象的だった。
「キックはキックでも、もっと強いキックじゃなきゃダメなんです。」
未だかつてない強敵を前に雄介(オダギリジョー)はどう立ち向かうのか。今のマイティキックでは、ザインを倒せない。そこで編み出されたのが、自身の持つ107番目の技=空中回転を組み合わせて、威力を増幅させるというもの。
22号への対策を考える時に一条さん(葛山信吾)とそんな会話をするのだけど、自分の技を蹴り技に応用できるか試すための時間が欲しい(意訳)って結構突拍子もないですよね。107番目の技?応用?みたいな。冷静に聞いてると、よく分からない会話であるのは間違いないと思う。ただ、それを真剣な目で訴える雄介と真正面から受け止めて応じる一条さん、この両者にしか通じない信頼関係が、ここまで築き上がったんだと思うと感慨深く思えるなあ、と。
一方その頃、バス停で出逢った神崎先生(井上高史)と桜子さん(村田和美)は、約束の場所である立花小学校へ向かう。バス内での二人のやり取り、立花小学校での会話シーンから、神崎先生が「教師」という仕事に、諦めや後悔に近い感情を抱いているのが伝わってきて生々しい。雄介との約束を思い出したのも偶然だったし、教え子との「約束」を自分の願掛けに使うのだって、決して正しいこととは言えないんだよな、と。
「教師」という職業は、聖職と謳われ続けてきた歴史がある。人を育て、正しい方向へ導いていく行為は、利益を求めて成果さえ上げればいいサラリーマンとは根本的に違う。学問だけではなく社会性を教え、時には叱らなければならない場面もある。子供たちにとって「良き模範」「善き人間」であることが最低限求められてしまう職業であるといえるのかな、と。
「教師」を聖職と呼んでいいのか?という是非についてはここでは話さないが、神崎先生も子供たちに自分の情熱や想いを伝えるために、教師という仕事に誇りを持っていたのだろう。しかし、国の教育方針の転換や保護者からの無理な要望、そして子供たちは未来へ希望を持てないと言う。こんな時代に教師は何ができるのか、半生を費やした教師としての行いに意味はあったのか。積み上げてきたものが、教師の在り方に戸惑う自分と重なって、時代の遺物と化してまう寂しさしか神崎先生には残っていない。
「私が信じていたものは消えてゆく運命のようです。」
こんなにも物悲しすぎるセリフもないんですよね。
#クウガ20周年配信 当時、神崎先生のこんなに切ない思いをチビッコ達に見せようと思ったのは何故なんだろう。ちょっと不思議です。#クウガ#超配信 #kuuga#nitiasa#クウガ20周年
— 高寺成紀☺4月30日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM (@taka_69s) 2020年10月17日
ここで桜子さんが神崎先生を励まそうと、雄介のことを語った時に初めて「約束」を思い出す。2000年までに2000の技を身につけること、「皆の笑顔のために頑張りたい」という雄介の想い、そしてサムズアップ。ここからの一連の流れは、何度見ても涙ぐんでしまうので、神崎先生のセリフをそのまま引用しておきたい。
「五代雄介、こういうのを知ってるか。」
「古代ローマで満足できる、納得出来る行動をしたものにだけ与えられる仕草だ。」
「お前もこれに相応しい男になれ。お父さんが亡くなって確かに悲しいが、でもそんな時こそ、お母さんや妹の笑顔のために頑張れる男になれ。いつでも誰かの笑顔のために頑張れるって、すごく素敵なことだと思わないか。先生は、先生はそう思う。」
雄介はなぜ誰かの笑顔のために、クウガとなって戦う覚悟を決めることが出来たのか。その原点になっていたのが、恩師である神崎先生の贈ったこの言葉の中にあったのである。
これは第2話の感想においても書いたのだけど、雄介の人間性って聖人に近すぎるがゆえに、物語上における都合のいい存在といえると思う。ただそこに甘んじること無く、彼が五代雄介である由縁を真正面から描いてくれた制作陣の気概を、このセリフからはひしひしと感じるのである。かつての恩師が教え子を救い、導かれた教え子の行動がその恩師を救う。ここまで美しい円環があるだろうか。ここで神崎先生が涙を流すと同時に、自分のやってきたことに意味があったのだと気付かされる。泣くしかないんだよな……。
#クウガ20周年配信 すみません、何回観ても胸が詰まる感じで、実況出来ませんでした。 神崎先生、有難う。桜子さんも有難う。#クウガ#超配信 #kuuga#nitiasa#クウガ20周年
— 高寺成紀☺4月30日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM (@taka_69s) 2020年10月17日
アイドリング音に引き寄せられる特性を活かし、一条さんはトラックで第22号をおびき出す。狙い通りにザインが現れ一条さんに襲いかかるも、特訓を終えた雄介が間一髪で駆けつけ、クウガへと変身する。打撃では太刀打ちが出来ないから、トライチェイサーの攻撃でザインに立ち向かっていく。(クウガのバイクアクションだけは見る度に「これだよこれ!!」ってなっちゃう。実家のような安心感。)しかし、これも弾き返されてしまうものの、一瞬のカウンターが決まり、ザインを怯ませることに成功する。
ここで、BGMが止まり、静寂が流れる。
もうね、これなんですよ。これ。
クウガが後ろに下がり間合いを取って、両手を広げる。
足首が赤く光り、足裏から炎が上がる。
敵に向かって駆け出し、勢いよくジャンプする。
空中前転の後に、右足を突き出す。
「うぉりゃああああ!!」
敵の体に蹴りを叩き込み、左の手と膝をついて着地する。
角をへし折られたザインはここで爆散。
これが強化マイティキック
く〜〜〜〜〜〜〜
最高かよ〜〜〜〜〜〜
最高だろ〜〜〜〜〜〜
リアタイで見ていた当時から、このライダーキックが脳裏に焼き付いている。普通のマイティキックに物足りなさを感じていたわけではなかったけど、本気でかっこいいこの強化版を見てしまったら虜になるしかないのである。「平ジェネFOREVER」で一連の流れが完全再現されていたのにも感動。
戦いを終え夜も暮れてしまったが、雄介もやっと到着。実はこの時点で神崎先生の表情から察するに、雄介に会えても会えなくても教師という職務への迷いはなくなっていたんだろうな、と。そして笑顔で向き合った二人が互いにサムズアップ。
『仮面ライダークウガ』も1クールを終えたところで、この感想記事も12話まで何とか書き終えることが出来ました。
次回からは第2章が開幕。
平成ライダーシリーズではお馴染みのあの先生が脚本を努めます。
それでは次の更新で。
(↑第13話の感想はこちら)