本当の戦いはここからだぜ! 〜第二幕〜

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【感想】『AI崩壊』

 

何気に今年初めて利用した映画のファーストデー。せっかく料金も下がるので、自分としてはこの機会に普段あまり観ないジャンルに手を出したりするのだけれど、やっぱり「観たい映画が観たい!」というわけで…

 

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『AI崩壊』を観て参りました。

 

 

 

以下、作中の展開に触れたネタバレ有りの感想です。ご注意ください。

 

 

 

 

 

※※※※※※※

 

 

舞台は2030年の日本。今から10年後という超近未来の日本で、医療用AI「のぞみ」がインフラとして人々の生活基盤の一部となっている世界。医療発展のために開発された人工知能がその技術を応用し人々の生活全般を豊かにしていく、実に輝かしい未来である。がんの治療薬も開発され、健康管理はもちろんのこと、人間には出来なかった分野への挑戦など、AIの可能性は無限に拡がっていることが描かれている。

 

現在放送中の「仮面ライダーゼロワン」は、人工知能“AI”をテーマの一つとしている。AIを搭載したヒューマギアによって人間の生活がより豊かになった世界を舞台に、ヒューマギアと共に人類のより良い未来の為に戦う“飛電或人=仮面ライダーゼロワン”と、そんな人類に変わって世界を支配しようとする“滅亡迅雷.net”との攻防を描いた作品だ。人工知能というテーマ自体が現代のトレンドであり、描くなら今がそのタイミングなのかもしれない。

 

作中でのこうしたAIの技術的な応用が、実にリアルだったな、と。技術考証を徹底的に行ったのだろうな、と素人目に見ても伝わってくる。例えば劇中で利用するデバイスとして腕時計のようなものを巻いている。なるほど、これはさながらApple watchのようだ。他にもエアコンの適温調節、居眠り運転の予防措置、どこまでも生活に順応した使われ方なのである。しかもこれらは現代にも存在する。

 

私達のイメージする人工知能といえば、アンドロイドやロボット的なものを想像するかもしれない。だからこそ、まだまだ先の話のように感じるけど、実際のところその時代にもう突入している。顕著なのでいえばアレクサ、pepper君、ルンバ、Siri…、これらも立派なAI。決して届かない夢物語ではないんだな、もしかすると、作中の世界が我々の未来に繋がっているかもしれない…そうした淡い期待を抱かせてくれる。

 

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その前段階として「のぞみ」が何故開発されたのか、普及に至るまでのプロセスが、テンポ良くダイジェストで描かれていたのも上手いよなあ、と。この時点で観客の気持ちはしっかり「のぞみ」に乗せられている。自分も見事に乗せられていたと思うし、羨ましさしかなかったのである。ここまで丁寧に作り込まれた世界観だからこそ、「のぞみ」が人類へ反旗を翻す時、ランプの色が緑から赤に変わった瞬間に、カタルシスが生まれるのである。これはスカッとするというよりも「あ、これはまじでヤバいやつだろ…おいおいおいおい…」、期待が一転して絶望に変わっていく。

 

 

ここから始まる負の連鎖が、もうほんとに肝が冷えるというか、あっさりすぎるほど人の命が散っていく様子は恐ろしかった。生活に順応しているということは、裏を返すと命を握っているのと同じこと。病院内のシステムは停止し、道行く人が突然倒れ、車の運転も制御が効かなくなる。学習を終えて“命の選別”を発動した時に、各々に合わせた死に方までもを導きだす。どこまでも合理的である。「のぞみ」に生活を掌握されている時点で、人類には為す術がなく蹂躙されるしかない。劇中で描かれるこうしたパニック描写は、かなり見応えがあったな、と。

 

 

本作はロケを全て国内で行っているとのことで、先に述べた民間人のパニック描写も首都圏で繰り広げられるチェイスシーンも、全部日本で撮影されたものなのである。こうした大掛かりな撮影を国内で行うのは、許可を取るのが難しいのが定説とされている中で、道路を封鎖しての特殊部隊による突撃シーンや自動車による衝突シーンなど、「邦画でこれをやれる時代がきたのか…!」とただただ感嘆する。脚本についても原作は無く、オリジナル脚本だとのこと。製作陣の本気度がここからも伝わってくる。

 

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今回の暴走は実際のところ、「のぞみ」を悪用しようとした外部からのアクセスが発端だったので、シンギュラリティの暴走というよりも“人災”“テロ”のような側面を強調していたように思う。AIという優れたテクノロジーは、常に合理的で最適解を出そうとする。しかしその全てを任せてしまうと取り返しのつかない事になる。主人公の桐生博士と妻のぞみが、試験段階のAIによる治療を拒んだのも、法整備が整わなければ責任が取れないという側面が大きかったのだろう。人間は人工知能を扱うことに対しての責任を忘れてはいけない。人工知能が身近になった現代で改めて問題を提起する、という意味でもこの映画が作られた意義は大きいと思う。

 

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確かに映画的な部分で言うと、ちょいちょい粗い部分が散見されるかもしれない。終盤のシチュエーション的に小学生の娘がそこまで機転効くのか?とか、警察側が簡単にハッキングされすぎなような気がしないでもない。

 

しかしそれを補って余りあるほどに、これだけの規模で成り立つパニック大作を、科学的な考証に基づいたAI描写と、オリジナルの脚本で描き、邦画で贈り出してくれたことが、もうほんとに嬉しい限り。

 

どうか『AI崩壊』ヒットしてくれ…!!