本当の戦いはここからだぜ! 〜第二幕〜

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感想『仮面ライダークウガ』EPISODE 2「変身」赤き戦士、その名はクウガ

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kazurex1215.hatenablog.jp

(↑第1話の感想はこちら)

 

 

 

 

 


今回登場するグロンギはズ・ゴオマ・グ(藤王みつる)=未確認生命体「第3号」。大きく裂けた口元に生え揃った牙、そして腕に生えた翼が示すようにコウモリがモチーフの怪人。日光や光の発するものを弱点としながら、上空から人間を素早く襲ったり相変わらず銃弾は全く効かないので、警察では全く歯が立たない。

 

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この第3号の存在で明らかになったのは、グロンギが人間に擬態できることなんですよね。しかも現場近くの教会で神父を殺し成り代わっていたんだけど、私たちの住んでいる日常の中へ溶け込むように擬態ができるというのが、グロンギの恐ろしいところだと思うんですよね。今後登場していくグロンギも多様なファッションで現れるんだけど、特にズの集団は個性が強くて、ギリギリ原宿にいそうなレベル。そう思うと、ゴオマが神父の姿に擬態したのは、実はかなり理にかなっているのかなあと。

 

 


ゴオマの一癖も二癖もあるキャラと立ち回りは、演じられている藤王みつるさんの怪演も相まって、『クウガ』の物語に必要不可欠な存在となっていく。振り返ってみるとグロンギ側の主人公とも言えるゴオマが、どんな物語を辿っていくのかも今後語っていきたいところです。

 

 

 

第1号との戦いから一夜明け、ファミレスで過ごす雄介オダギリジョーと桜子さん村田和美。謎のベルトを腰に巻いて化物と戦ったら自分の姿まで変わってしまって……という経験をすると、普通なら何が起こったのか理解もできずに全然落ち着かないというか、桜子さんがめちゃくちゃ心配するのは至極真っ当なんだけど、それをいつもの調子で「まあ、大丈夫なんじゃない?」っていう能天気な感じで受け流すのが、五代雄介なんですよね。

 

 


非常に意地悪な言い方をすると、雄介のキャラ造形って『クウガ』の物語にとても都合よく設計されているとも言えるんですよね。人間的に未熟な部分が少なくて既に精神的には成長しているし、問題が起こってもそこで立ち止まらなければ、悩んで考え込むこともない。さらに能天気でちょっと変な人というバランスで描けば、クウガに変身するという作中最大のイレギュラーに対する許容が生まれるので、こなすべきドラマのパートが格段に減るし、作劇上の不都合が生まれにくい。特にリアル志向なドラマ構成を求められる『クウガ』という作品は、たくさんの描くべきドラマがあるから尚更なんですよね。

 


客観的に見てこのバランスで描き続けても、『クウガ』における五代雄介はしっかり成立したと思います。だけど、ここで巧いのが、五代雄介という人物の掘り下げ描写を、細かな部分や何気ないところで丁寧に描いているんですよね。少し変だけど自然に感情移入させてくれるバランス、変人な部分と親しみやすさがしっかり共存している。

 


「ただの冒険野郎に戻れるといいよね…。好きになれないからな、あの感触は」

白いクウガに変身した時の状況を、桜子に吐露したセリフ。たとえ相手が誰であろうと、拳を振りかざすことはしたくない雄介の優しさが現れている。楽天的なように思えて、心の底では「戦いたくはない」と思っている雄介の本質が、垣間見える言葉なんですよね。

 

 


ゴオマと初めて対峙した時も、勢いで現場に駆けつけた雄介の表情はかなり怯えているように思えるのが妙な部分で、意を決して第2号=白いクウガへと変身するも、全くと言っていいほど歯が立たない。握った拳に一瞬視線を落とすグローイングの動きだけで、「躊躇い」が十分に伝わってくる。

 

「何とかしたい」「戦わなければならない」と頭では分かっていても、いざ現実を目の当たりにすると身体は動かない。当時の自分が考えさせられたのは、力を手にしてもすぐに戦えるわけではないっていうところなんですよね。変身さえすれば自ずと戦えるものだと思っていたし、今まで見知ってきたヒーローにここで立ち止まる者はいなかったな、と。

 


その迷いが原因で、一条さん(葛山慎吾)に重傷を負わせてしまうし、そんな雄介の迷いを読みとったのか厳しい言葉を浴びせる。

 

「君が戦う力を得たと思うのは勝手だ!だが君に戦う義務はない!」

「中途半端に関わるな!」

 

この迷いがあるから五代雄介はただの一般人であり、そんな普通の人間が力を持って戦うことへの「重み」を、あらためて突きつける。市民を守ることを職務にしている一条さんは雄介と対称的な立ち位置にあり、目の前でクウガに変身した姿を見ても、一条さんにとっては、彼もまた市民の一人なんですよね。

 

幼心に「どうして雄介はここまで怒られるんだろう?」「警察はグロンギとまともに戦えないんだから、クウガに戦ってもらったほうが良いじゃん」と思ったものです。この時に胸ぐらをつかんでまで雄介を恫喝する一条さんの真意を理解できたのは、もう少し後になってからでしたね。

 

 

 


クウガに変身する力を手にしても、まともに戦うことが出来ない。「力」を得たとしても、そこに「意志」が備わらなければ、守れたはずの命も失ってしまうかもしれない。どうすればいいか迷い続ける雄介に、転機が訪れる。それが第1話で亡くなってしまった調査団のリーダーである夏目教授(久保酎吉)のお通夜なんですよね。

 

通夜中に泣きながら家を飛び出した女の子は、死んだ夏目教授の娘である実加ちゃん(竹島由夏)で、そのまま玄関先にうずくまってしまう。これからも雄介が戦わなかったり、未確認生命体に負け続ければ、実加のような被害者が生まれ続けていくんですよね。雄介が身を投じた戦いは、負けることが許されない、勝ち続けなければならない。守れなかった悔しさと何も出来ない自分へのもどかしさ、壁に打ちつけた拳が物語るように、雄介が覚悟を決めた瞬間としてこれ以上にない「理由」だったな、と。

 

 

 


ゴオマが潜伏する教会へ、一条さんは単身で乗り込んでいく。このシーンって普通はもっと人員を要請して、応援が駆けつけるまで待機しておいた方が良いと思うんですよね。一条さんにしては、少し迂闊にも思えてしまうんですけど、理由付けはできます。おそらく聞き込みや捜査の関係で単独行動のほうが動きやすかったのと、未確認の捜査で県警も他に人員が取られていた、そして拳銃ではなくライフルなら仕留められるかもしれない可能性に賭けたのかな、と。

 

 

 

とはいえ、ゴオマとの戦力差は明らかで相手にもならず、一条さんに至っては手負いだし遊ばれる程度に弾き飛ばされてしまう。その拍子に倒れたロウソクが引火し、辺りはたちまち燃え盛る。追い込まれ逃げ場を失ったその時、教会の扉からバイクで誰かが突っ込んでくる。現れたのは、五代雄介だった。

 

「何しに来た!」

「戦います、俺!」

「まだそんな事を!!」

 

「こんな奴らのために、これ以上誰かの涙は見たくない!みんなに笑顔でいてほしいんです!」

 

「だから…見てて下さい!俺の、変身!!

 

雄介と一条さんの二人が本気でぶつかり合うセリフの掛け合い、何度見ても涙ぐんでしまうんですよね。この期に及んでも一条さんは助けに来た雄介を恫喝するし、彼を自分の後ろに下がらせようとする。でも中途半端ではなく本気で向き合う「覚悟」を決めて、猛然と立ち向かっていく雄介。ドラマが一番盛り上がる瞬間にヒーロー番組のカタルシスが絶妙なタイミングで重なって一気に爆発し、ここで初めて真の姿に変身する。変身するまでに諸々の要素がクリアされていく過程があまりにも完璧というか、これをリアルタイムで浴びてしまったわけです。人生が決まるといえば大げさだけど、魂が震えるほどこんなにもカッコいい変身シーンには、もう出逢えないだろうなと確信してしまったんですよね。

 

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クウガの基本形態である赤い戦士=マイティフォーム。グローイングフォームの時とは違い、その一撃一撃が確実にゴオマへダメージを与えている。ここで第1号も現れて、2体の怪人を前に苦戦を強いられるんですけど、朝を迎えたことで日光が苦手なゴオマは逃げ出してしまう。第1号とのリベンジマッチの中で、口から吐く糸で体の自由を奪われるというシチュエーションが再び訪れるんですけど、あえて同じ状況を持ってくることで、前回と同じではない明確な対比となっているんですよね。

 


赤のクウガはその糸を断ち切って、形勢を逆転。すかさず隙が生まれた瞬間に、右足からキックを叩き込む。そう、これがライダーキックもとい「マイティキック」なんですよね。決まった見得を切って、技名を叫ぶこともなく、戦いの中で流れるように必殺技を決める。リアル志向の『クウガ』だからこそ得られた必殺技の一つの適解だなあ、と。昭和ライダーをほぼ知らなかったので、このライダーキックに当時は驚きはしなかったんですけど、世代の方にとっては結構衝撃だったんじゃないでしょうか。ウルトラマンで言うスペシウム光線が大胆にアレンジされているわけですもんね。

 

 


ついに戦う覚悟を決めた雄介。
しかし、それを一条さんが認めるかどうかは別の問題なんですよね。


まだまだ始まったばかりの『クウガ』の物語は、次回の第3話から少しずつ動いていきます。それでは次の更新でお会いしましょう。

 

 

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(↑第3話の感想はこちら。)