本当の戦いはここからだぜ! 〜第二幕〜

好きなものをどんどん語ります

感想『仮面ライダークウガ』EPISODE 14「前兆」命の重さと生きる意味

 

 

 

 

kazurex1215.hatenablog.jp

(↑第13話の感想はこちら)

 

 

 

既に明らかなことではあるけど、『クウガ』は一つのエピソードを前・後編として描く手法を取っている。そのため1時間のドラマをニチアサの30分枠でわざわざ区切っているような感覚だ。あくまで描く中心にあるのは人間ドラマであり、そのためならクウガと未確認生命体のバトルは最小限に短縮されることもしばしばあった。ギイガ戦(第9話)やザイン戦(第11話)の時は、クウガが追い込まれて不利な状況へ陥ったことをクリフハンガーにしていたが、前回の13話に関しては特にピンチになったわけでもなく完全なぶつ切り状態。今回の14話ではその地続きで開幕するわけだけど、現行のニチアサ制作体制ではまず考えられないだろう。

 

 

ビランの俊敏な動きと肘に生えている鋭いカッターによる攻撃で、マイティフォームのボディに傷がついてしまう。ここでクウガは防御力の一番高いタイタンフォームへ変身。敵の能力に合わせて瞬時にその姿を変える事ができるのは、基本形態が出揃っているからこそ。ビランの刃は届かずタイタンが繰り出すパンチで形勢逆転したと思いきや、装甲の覆われていないアンダーアーマーに噛みつかれてしまう。ここで一条さん(葛山慎吾)による特殊ガス神経弾の援護がなければ、相当危険な状態だったかもしれない。



 

23号に襲われた被害者の検死結果とその攻撃で受けた傷の状況を調べるために、解剖医の椿(大塚よしたか)の元へ訪れた雄介オダギリジョーと一条さん。ここで初めて雄介は、自身を未確認生命体だと言い張った蝶野(内田大介)と遭遇する。病室での雄介と蝶野の対話って、受け取り方によってはかなり賛否のあるシーンなのではないかと思っている。もっといえば、それは視聴者が蝶野をどう捉えているかに繋がっていく。

 

 

 

重い持病を抱えながら職にも就くことができないこの人生に、何を見い出せばいいのか。そんな自分に存在価値があるのか。社会の中に居場所を見いだせない状況で、未確認生命体という異質な存在が、蝶野の心に共通項を植え付ける。

 

「未確認なら俺を分かってくれる」という盲信へ縋るしかない彼に、自分としては少し同情してしまうのである。自分語りで話が脱線するのだけど、大学受験の浪人生だった時に自分にしか理解できない疎外感は常に感じていた。同級生は進学したり社会人になったり各々の道を歩んでいるのに、なぜ自分は同じことをまた繰り返しているのだろう。勉強しても結果が出ない時ほど、自分が今予備校にいる立場の意味を考えてしまう。あの当時の気持ちをどんどん増幅させたら、おそらく蝶野のような青年に自分もなっていたと思う。



ただその反面、蝶野の悩みって実はとてもわがままで、何も上手くいかない自己不満を他者の責任に転嫁させ現実逃避しているだけともいえる。重い病気を抱えても前を向いて生きている人だっているし、目的も持たずにフリーターの道を選んでいるのだって、社会という現実に足をつけて生きることを放棄した結果とも言えてしまうのではないか、と。自分が浪人生という道を選んだのも、自分の行きたい大学があったからに他ならない。結局は自己責任なのだから。

 

 

kazurex1215.hatenablog.jp

(↑そんな浪人生時代の思い出を振り返ったのがこちらの記事)

 

 

 

 

「どうして未確認に憧れたんですか?」

 

 

「人の気持ちになるなんて無理ですよ。思いやることなら、何とか出来ますけどね」

 

 

「蝶野さん生きてますか?生きてるなら人生を自分で楽しくした方が良いですよ。ダメですか?」

 

 

 

そんな蝶野に対してストレートな物言いで相手の懐に入り込むのが雄介らしくはあるのだけど、それでも自分としては雄介の言葉をとても辛辣に感じてしまう。夏目実加ちゃん竹島由夏)の時の寄り添い方と比べると、やや突き放したような印象を感じるというか、当たり前の言葉を投げても彼は聞く耳を持たないことに、雄介なら分かりそうなのになあ、と。(中学生の女の子と成人を迎えた男性を同列に語るのは違うのかもしれないけど……。)



しかし、ここで椿が蝶野に解剖された死体を目の当たりにさせる。どれだけ頭でこねくり回しても、死んでしまえばそこにあるのはただの肉塊。何の罪もない人が命を奪われているという「現実」がそこにある。雄介が遠回しに語ったような生ぬるいことはしない。椿の解剖医という立場があるからこそ説得力があって、口にする言葉に重みがあるんだよな、と。ここに井上脚本のキャラ造形の旨みが生きていて、キャラのギャップで見せつつ根本にある男としてのカッコよさをちゃんと描いてくれるのが信頼できるんだよな、と。






そんな司法解剖の結果と捜査員の聞き込みから、ビランが血の匂いに反応して人間を襲っていることが判明する。そこで一条さんはボートに乗せた人工血液でビランをおびき出し、雄介はトライチェイサーで川沿いを並走することで、撃退作戦に打って出る。雄介と一条さんが単独で作戦を展開するのは、実は今回が初めてなのでアツい展開。

 

 

計算通りにおびき出されるビラン。ボート上で一条さんと激しくもみ合いになるも、トライチェイサーから飛び出した雄介がドラゴンフォームで応戦。(ここで船外に一条さんが激しく投げ出されるのだけど、これはどうやらご本人が演じているらしい……)椿に諭されてもなお、蝶野は懲りずに未確認生命体の出現した川辺にわざわざやってくる。

 

 

 

ここで陸に上がったビランと遭遇し、会話を試みるのだけど、もちろん未確認にとって蝶野はただの「獲物」に過ぎない。ここでやっと「現実」を実感した時に発する蝶野の絶叫が実に生々しい。目の前に死が迫った時の人間はああいう風になるんだなと妙な説得力さえ感じる。

 

 

しかしそこへ同じく陸に上がったクウガが現れ、蝶野を救う。水辺で戦うドラゴンフォームは水しぶきも相まって絵になるなあと思いつつ、打撃が弱くなるその姿でビランになぜ攻撃が通ったのか考えると、ガス神経弾がかなり効いていたんじゃないかと。そして川辺に刺さっていた木の棒を手にとって、ドラゴンロッドへ変換。とどめにスプラッシュドラゴンを決めて、ビランは爆散した。

 

 

 



病室で綺麗事に近い言葉を投げかけてきたあの男が実は4号で、今まさに自分の命を救ってくれた。蝶野のプライドをボロボロにするには充分すぎるほどである。全話見終わったからこそ言えることだけど、蝶野が描かれるエピソードがもしも13話と14話だけなら、その後の顛末は不十分だと思うし、不満も残っていたなあ、と。しかし、彼がこの出来事をきっかけにどのような選択をするのかは、今後のエピソードで語っていきたい。



長野で発掘された謎の遺物達は東京への護送中に謎の物体へと姿を変えて、ジャン(セルシュ・ヴァシロフ)たちの前から突如消え去ってしまった。

 

昆虫にも似た姿のアレは人間の味方なのか……。



それでは、次の更新で。

 

 

 

kazurex1215.hatenablog.jp

(↑第15話の感想はこちら。)